焔の存在を幻想にさせぬ為に

「おぼろ気というか、あくまで推察なのですが・・・その幻想になるというポイントが気になったのです。確かに貴方の中にあるルークの記憶に魂といった存在は嘘偽りのないルークの物なのでしょう・・・ですが我々というか、私がそうするようにと進言したではありませんか。貴方が大爆発によって一人だけ生きて帰ってきた以上、ルークの事まで帰還に希望を持たせないようにとその存在を無いものとしようと・・・そうしてこの三十年程でルークの事を知る者は我々以外ではもうほぼいなくなりましたが、それはつまりルークという存在が幻想になったのと同じ意味ではないかと思ったのです」
「何・・・そんなことが有り得るのか・・・?」
「流石ですわ、そこまで理解していただいているなんて」
「っ・・・まさか、合っていたのか・・・!?」
ジェイドは自信なさげにしながらも自分の考えを述べアッシュは正しいのかと思うが、まさかの紫が正解だといったような声を上げた事に驚愕の目を向ける。
「私も色々と調べていって驚いたのですよ?アッシュと大爆発で同化してルークの魂や肉体が存在するはずがないのに、ルークの体に記憶はそのままに幻想郷に来た・・・前例がない幻想入りに私も困惑しましたが、ルークが幻想入りしたのは何故かとなればそれが一番しっくりと来ました」
「しっくり来ただと?それが正解ではないのか?」
「言いましたでしょう?前例のない幻想入りだと。ですが大爆発で貴方とルークが一人に戻ったことを考えれば、これくらいしか理由が思い付かないのです。ルークという存在が幻想になったからそうなったのだと」
「・・・お前もハッキリとは分からなかったと言うことか・・・」
紫はそれが正しいという確信はあるが確実にこれだとの証明は出来ないといった様子に、アッシュもそう言ったものかと思うしか出来ずに声を漏らす。
「・・・一先ずは貴女の言うことは正しいものとして認知しますが、ルークがそうやって存在しているという状況で我々に協力してほしいというのは・・・ルークを我々の手によって、このオールドラントに戻して生活出来るようにしてほしいということですか?」
「っ・・・そうなのか?」
ただここでジェイドが静かに確かめるように向けた問いに、アッシュはどこか気持ちが浮わつく部分を抑えながら紫に確認を取る・・・昔はともかく今はもうルークを嫌っていない身として、ルークが戻ってくるならいいことであるという気持ちを滲ませながら。
「貴殿方にとっては残念な事でしょうが、それは違いますわ」
「っ、何故だ・・・?」
「元々私がそうすることを目的としてここに来ていないこともありますが、もしそれでもというのであればルークの存在が消えかねない可能性の方が窮めて高いということは認識しておいてください」
「存在が消えかねない、だと?」
「元々ルークはそのような形で幻想入りして体を得ることが出来ましたが、あくまでそれは幻想郷の性質があってのことでありその肉体が幻想郷の外に行っても保たれる可能性があるとは思えません。れっきとした肉体を持つ存在ならまだしも、今のルークの肉体の事を考えれば希望的な観測を持って大丈夫だなどととても言えるものではありませんわ」
「っ・・・そう、なのか・・・」
だがあっさりと紫が否定を返した上で無理矢理にでもルークを連れてきた場合の可能性についてを述べると、アッシュは落胆したようになりながらも納得するしか出来なかった。またルークを消滅させるような事態など望んでいない為に。









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