築き上げる苦労

(ただどっちにしても、今はここから早く逃げることだ・・・神託の盾は俺達に追っ手を差し向けてくるし、出来るだけ逃げる距離を増やしておかないとな)
(『追っ手、か・・・ラルゴの時でもかなり衝撃だったけど、これからは神託の盾を相手に結構な数を殺すことになるんだよな・・・人を・・・』)
(あぁ・・・それはな・・・)
それでティアの事を一先ず置いておいてと話をしようとするルークだが、『ルーク』の苦痛を感じるような声に同じような声を漏らす。
(『・・・ジェイドみたいに慣れないのか、お前は?俺よっか長い間生きてるって話だけどよ・・・』)
(ジェイドにさとりの話をしたの覚えてるか?・・・そのさとりの話じゃ人を殺すことに俺が慣れることなんてないほど、俺の心の傷ってヤツは深く抉れてるらしいんだ・・・例えるなら傷口にかさぶたは出来ても、骨や内臓にまで到達するほどに抉れてもう元には戻らないくらいだって)
(『っ・・・それだけお前にとって、アクゼリュスでの時とかの事はトラウマってヤツなのか・・・』)
(さとりも言ってたよ・・・これだけトラウマが深い人は初めてだって。ただその時の事があったのと、幻想入りした人物との事があったから仲良くはなれたんだけどな・・・)
そんな声に対して『ルーク』は慣れなかったのかと聞くと、さとりとの話を引き合いに出しつつ深いトラウマとして今も心の中に根付いているとルークは答える。
(・・・確かに俺は人を殺すことに慣れることなんて無いだろうとは思う。ただだからって言って、俺の中にいるからってお前はそのことに目を向けなきゃならないって事じゃないんだ。だから無理をしてその時に目を開く必要はないよ)
(『必要はない・・・そうは言ってくれるけどよ・・・』)
(俺の経験をそのままお前にまで経験させるつもりはないけど、だからって言っても人を殺すことに慣れる必要はないよ・・・と言うか多分お前も俺と同じで慣れたいなんて思うようなタイプじゃないと思うし、俺がやるんだ・・・それでもお前が目を向けて行動しなきゃならないとか、そんなことをしなきゃならない理由はお前にはないよ)
(『・・・確かに理由はねぇかもしれねぇ。でも、だ・・・それではいそうですか、なんて全部から目を反らしたくねぇよ・・・!』)
(え・・・?)
そのままルークは自身の気持ちを口にしていく中で無理に目を開け人を殺す瞬間を見なくてもいいと気遣うように言うが、対して『ルーク』が強い意志を持って声を返してきたことに戸惑う。
(『・・・ここでの事は本当なら俺が全部やらなきゃならないことだったんだろ。それが成功するかしないかは一先ず置いておいてだ・・・そこにお前や紫達が来たことで色々と変わるばかりか、この世界もうまく存続出来る可能性が出来たって言われた・・・その中で俺はお前には体を提供してるって訳だが、それで俺は何もしなくていいかって考えると違うって思ったんだよ』)
(・・・だから人を殺すことになる瞬間から目を反らしたくないって言うのか?)
(『実際に手を出さない俺が言って何になるみたいに言われるかもしれないけどよ・・・せめて少しでも俺がやれることをやりたいんだよ。でないとそのまんまじゃ俺が腐っちまうんじゃないかって思うんだ・・・トラウマを抱えたまま戦うお前にずっと甘えたまんまなんて選択をしてしまったらよ・・・』)
(・・・そうか・・・そう考えてるのか・・・)
それで『ルーク』が語る自分の中での考えを精一杯、それでいて苦悶も感じられるその言葉をルークは感じ取った。いかに『ルーク』が真剣に考え、そうしないでいいと決断を覆させるのはいかに難しいかも。









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