英雄と呼ばれた男は真実を知り、仲間と共に堕ちる道を選び幻想になる 後編

・・・魔法の森の入口に、いきなり家が現れた。そんなニュースが幻想郷中に広まる少し前に遡る・・・






「・・・つまり俺達やこの家は、幻想入りしたということなのか・・・」
「そういうことでしょうね。というよりそうでもなければ昨日までここに家なんてなかったのに、いきなりここに家が現れるなんて有り得ないと思ったからそう言っているのよ」
「・・・原住民からすればそうでもないと説明がつかないと分かってるからこそというわけか・・・」
「だからそう言ってるんだぜ」
・・・四人が住む家のリビングのテーブルにて。
テーブル越しに椅子に座るアリスと魔理沙の二人からの説明を受け、四人の代表となって後ろに立つ三人を背に椅子に座りながら話を受けたセフィロスは何とも言いがたそうな様子になる・・・四人で苦労して家を建ててから平穏に数年という時間を過ごしていた中、唐突に幻想入りという事象に巻き込まれてしまったということに。
「・・・元の所に帰りたいのかしら?その様子から見て」
「あ~・・・そういった気持ちが全くないかって言われたら嘘になるけど、そこまで戻りたいかって言われたら正直そうでもないんだよ。住む場所が多少変わっただけって思えば、別にそんなに気にする必要はないんじゃないかって少なくとも俺は思ってる」
「・・・俺もザックスと同じような物だ。確かに向こうに帰れないのは少し気がかりではあるが、絶対に帰りたいという気持ちはない」
「私も同様で少し気掛かりな事はあるが、私が残ってもいいことがあるとも思えないからな」
「そして俺も同じだ」
「・・・つまり是が非でも帰りたい理由はないのは四人確かなのね」
アリスがその様子に確認の声を向けるが、揃って帰ることに積極的な気持ちはないとの事に軽く目を閉じる。ただその言葉を受け入れるよう。
「まぁそれはいいけど、魔法の森の前に家ごとってのは流石に運が悪いぜ。まだ森の中じゃないからいいって言いたいが、全然この辺りも妖怪は来るからな。だから安心して暮らしたいなら人里を紹介してやるからさっさとそこに行った方がいいぜ?」
「妖怪、か・・・話によればこの幻想郷における魔物のような存在であり、人を食うとの事だそうだが・・・俺は気にしない。ここに家があるのは土地の所有者に迷惑がかかると言うなら話は別だが、そうでないのならここにこのまま住ませてもらう」
「はぁ!?本気か!?」
そんなアリスを気にせず魔理沙が気楽そうに人里へ行く事を勧めるのだが、セフィロスが平然とこのまま住むと返したことに驚きに目を丸くした。
「心配すんなよ。俺達はそれなりに強いから、妖怪くらいどうとでもなるさ」
「いやいやいや、そんな簡単そうに言うけどよ・・・」
「魔理沙、何処に住むかに関してを強制する立場に私達はいないわ。実際貴女も周りからの反対なんか気にしないから今のところに住んでるんでしょ?」
「そうだけどよ・・・」
「だから私から折衷案として一週間程彼らに通信用の人形を預けることにするわ。もし助けを求めてくるだとかもうここに住めないと弱音を吐くようだったら私がすぐに動いて助けるようにするから、その連絡が来るまでは彼らに何が起きても自己責任という形だったり試しの期間ということで過ごしてもらうようにね」
「あ~・・・うん、それでいいか・・・実際痛い目に合わないと分からない外来人も多いからそれくらいで・・・」
ザックスが笑顔を浮かべ大丈夫とハッキリ言いきる様子に魔理沙はなんとか食い下がろうとしたが、アリスが制止と共に出してきた案に複雑そうに頭をかきながらも了承をした。実際の所として外来人が自分なら大丈夫と根拠のない自信で勝手に痛い目を見た話は多いとは言わずとも、全くない話では無かったために。









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