英雄と呼ばれた男は真実を知り、仲間と共に堕ちる道を選び幻想になる 前編

「・・・その理由はこの体に移植したジェノバ細胞の力よ。実験の為にと私も賛成をした上で移植をしたまでは良かった・・・でも時が経つにつれ私の見た目が歳を取らなくなっていったことから人目を避けるようにしなければならなくなったのもそうだけれど、何より問題だったのは辛いからと自殺をしようとしたとしても死ぬことはなかったの・・・」
「歳を取らず、死ぬことはないだと・・・ならば俺の体も貴女と同じようになるのか?」
「いえ、この作用はあくまでもジェノバ細胞を直接体に移植したからこその結果よ。ニブルヘイムの魔晄炉の奥の像に隠してあるジェノバの肉体は、少なくとも私が細胞を移植するまでは言葉を発さなくても生きていると取れるくらいの生命を感じさせる物だった。詳しく言うなら他にも特性はあるけれど、ジェノバ細胞の生命力も着目した上で私に移植したのだけれど・・・貴方は私が移植した細胞の特性をある程度引き継いだだけで済んだと思われるけど、そんな驚異の生命力を持つ細胞を直接植え付けた事から私の体の細胞はジェノバ細胞に侵食される形で、普通の人間では有り得ない程の生命力を持ってしまうことになったの・・・毒を飲んでも刃を立てて自殺をしようとしても、死ぬことが出来ないくらいにね・・・」
「「「「っ・・・」」」」
ルクレツィアはそんな体勢のままにいかにジェノバ細胞が凄まじいのかを自身が取った行動と共に言葉にしていき、それらを聞いた四人も痛ましげな物を見る表情を浮かばせた・・・死にたいのに死ねない上にそれだけルクレツィアが追い込まれるといった事態になったのだということに。
「・・・といっても元々ジェノバ細胞を植え付ける事を自分で賛成した身だから、自業自得と言われればそれまでなのだけれどね・・・」
「ルクレツィア・・・君の頭脳ならどうすればいいかの解決手段は思い付いていないのか?」
「・・・解決手段は到ってシンプルな物が一つあるわ。それは・・・再生が追い付かないように圧倒的なダメージを与えるか攻撃を続けるなりして、再生させないようにするというだけよ。でも私が自分でどうにかしようとマテリアを使っても元の力の低さから、自傷では再生能力の前にはどうにもならなかった・・・だから誰か私を殺してくれる事に納得してくれる強い人の協力が無ければ、私は不老不死とまでは言わなくとも相当に長い間を生きることになるでしょうね・・・」
「ルクレツィア・・・」
そのままルクレツィアが自身の境遇を嘆くように漏らす声にヴィンセントがどうにかしたいというように問い掛けを向けると、自分ではない誰かが自分を殺してくれる事だけとの言葉に悲痛そうな声を漏らすが・・・そこでセフィロスは無言で正宗を出した。
「お、おいセフィロス・・・まさか・・・」
「・・・俺も気が進まないのは確かだ。だがそれ以上に今の話の中身として母は誰かに自分を殺してほしいというように願っていると感じた上で、ここにずっといては俺達以外の誰かが以降に来るとは思えないし俺達だからこそ母はここまで話したのであって、他の誰かが来ても母は今の話をすると思えん・・・そう考えていくと俺が今ここでやらねばならんと思ったんだ。後で改めて考えてからここに来れるかどうかも神羅の動き次第では分からないからな」
「っ・・・だからセフィロスは自分でやるって言うのか・・・」
ザックスは慌てて正宗を握る手を掴み制止するのだが、セフィロス自身も本意ではないといったように言いつつも理屈として今でなければとの言葉に、否定が出来ずに辛そうに表情を歪めた。特に自分達がここにまた来れる保証が出来ないというのはやってきたことから重々承知せざるを得なかった為に。









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