英雄と呼ばれた男は真実を知り、仲間と共に堕ちる道を選び幻想になる 前編

「・・・すまない、何かまだ聞くことがあったかもしれないのに勝手なことをした」
「・・・いや、構わない。俺は他に宝条に聞くこともなかったし、母の事を知らない俺より母を想っていた貴方の怒りが強いのは当然だ」
「そう言ってもらえて感謝する」
しかしすぐにヴィンセントは表情を戻してセフィロスに謝るのだが、すぐに大丈夫と首を横に振られた事に謝意を示す。
「・・・話の途中だけど、早くここを出よう。今はまだ大丈夫だと思うけど、事実が発覚したらここから脱出が難しくなるから早く出た方がいい」
「そうだな・・・早く行こうぜ、二人とも」
「あぁ、行こう」
「ここで止まる訳にはいかないからな」
そんな空気に敢えてというよう脱出を切り出すクラウドにザックスも同意して二人にもと話題を振ると、共に頷いて四人は足早にその場を後にしていった・・・物言わぬ死体となった宝条の事などもう気にすること無く・・・


















・・・そうして四人は急いで神羅の本社ビルを後にしていった。その際に手間こそはかかったがヴィンセントに来てもらった時同様に、エレベーターを使うこと無く非常用の階段を使っていったことから監視カメラにほとんど映らず、怪しまれる事もないままにビルを後にしていった。

そして四人は夜が明ける前に用意していた車を飛ばしてミッドガルの外郭近くにまで行き、晴れてミッドガルから脱出することに成功した。尚ミッドガルの魔晄炉もどうにか出来ないかという話し合いもされたのだが、それは流石に神羅のお膝元でやるのは難しい事や魔晄に照らし続けた人のカプセルは置かないだろうということから、そこについては保留となったのである。

そうして四人はミッドガルを出て、追手を警戒しつつもあらゆる移動手段を用いて世界各地にある魔晄炉を止める活動に入った。一時しのぎ程度の物だと分かりつつも、それでも一度決めたことだからやろうということでだ。

・・・しかしそんな風に動く中でミッドガルを急いで離れた四人は知るよしもないのだが、神羅の本社は最早四人に構うような余裕が実はなくて追手を出すことが出来なかったのだ。何故なら神羅のトップであったプレジデントや息子であるルーファウス、それに加えて各部門のトップの面々が軒並み殺されてしまった事で神羅内が混乱の極みに陥っていたのである。

そして更にそんな形の為に臨時で神羅の代表となった唯一の幹部であり、穏健派であったリーブがプレジデント達を殺した犯人の中にセフィロスがいたと発覚したこと・・・そして時間が経って魔晄炉が四人に止められていくのを知ったことから、なんでこんなことをしたのかを調べていく内にニブルヘイムの魔晄炉の事が出てきて、リーブは熟考していった上で理解したのである。セフィロス達はニブルヘイムの任務で魔晄炉の事実に気付き、行動を起こしたのだと。

・・・実はまだ幹部として頭角を現すようになって日が浅かった上で神羅が人を魔物に変えているであったり、他にも非人道的な行動をしていることに慣れていなかったリーブは、セフィロス達の気持ちが分かるから見逃すようにしようと思ってしまったのである。

そしてそれで魔晄炉を止めてくる事に関してどうするのかと神羅の社員に聞かれても、相手がセフィロスでは無駄になる可能性が高いから様子見に留めるようにと指示を出した。それでそうしてセフィロス達に関して公然と放置する事にして、リーブは神羅を新たな形でクリーンに建て直していこうと決めて動いていくのである。もう魔晄や魔晄炉に頼ることの無いようにしていくことも含めて。

・・・実は神羅内でリーブがそのような形で動いてくれた事から追手がかからず、自由に動けていた四人。しかしそんな事に四人は気付くこと無く、人目を出来る限り避けるようにして動いていくのだが・・・再びニブルヘイムに向かう際に遠回りをしていた四人は険しい道を乗り越え、とある滝の裏の洞窟に辿り着いた。









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