英雄と呼ばれた男は真実を知り、仲間と共に堕ちる道を選び幻想になる 前編

・・・そうして四人は善は急げと早速ミッドガルへ向かうために行動を起こした。神羅には任務は終わったと虚偽の内容の報告を兵士の立場にいたクラウドから出させた上でニブルヘイムから出て、ミッドガルに戻る移動時間にどのように行動するかについて話し合った。プレジデントを始めとして始末するんなら確実に一夜の内にまとめてやらねばならないということに、その機会を伺いながら行こうと。

そうして四人は計画を詰める中でミッドガルに戻り、ヴィンセントは影に隠れる形で何もないというように三人は振る舞っていくのだが・・・四人にとってのターゲットが神羅カンパニーの本社に勢揃いするという絶好の機会が訪れたことにより、行動を起こすことにした。そうそうこんな好機が訪れる事などないために。

・・・そうして四人というか、クラウドを除いた実力者三人はプレジデント達を一斉に暗殺していった。と言ってもクラウドは何もしていないという訳ではなく、会社の外で待機していたヴィンセントをIDカードを用意する形で裏から引き入れたり連絡の中継役をしていた。

そうしてプレジデント達を素早く暗殺していったセフィロスとザックスは、最後に回すと決めていた宝条の元にいるヴィンセント達の所に行った。






「・・・後は宝条だけのようだな」
「あぁ、見ての通りだ」
・・・銃弾に頭を撃ち抜かれた血塗れの死体が辺りに転がる研究室の中、両足両腕を銃で撃ち抜かれて地面に這いつくばる宝条を前にするヴィンセントとクラウドの元にセフィロス達が訪れ、辛うじて頭を上げる宝条を絶対零度の瞳で見下ろす。
「・・・気分はどうだ、宝条?いや、父と言った方がいいか?」
「っ・・・クァックァックァッ・・・知ったのか、自分が私の子どもだということを・・・」
「ニブルヘイムで彼と出会ってお前や母の事を聞かなければそんなことも知らないままどころか、見当違いな事を考えていただろうがな」
「彼・・・ニブルヘイム・・・あぁ、あの時のサンプルか、思い出したぞ」
そのままわざとらしく父という単語を吐くセフィロスに宝条は苦痛に顔を歪めながらも独特な笑い声を上げるが、そこでヴィンセントに話題が行ったことにその中身もあってようやく思い出したというように漏らすが、ヴィンセントは表情を変えずに口を開く。
「お前がそういう奴だということは承知しているし、もうそのことはどうでもいい。ただお前に聞きたいことがある。ルクレツィア・・・いや、お前が名前を覚えているか分からんからこう言うが、セフィロスの母はどうした?セフィロスからは物心ついた時から影も形も無かったと聞いているが・・・お前が殺したのか?」
「クァックァッ・・・あれの事は私にも分からん。セフィロスが生まれてそのデータを見たことで、もうあれについては役割を終えたと判断したからな。だから私はニブルヘイムにあれを置いてセフィロスを連れてここに戻って以降は神羅に戻ってきていないから、あれがどうなったのかは知らん。生きているか死んでいるかもな」
「「「っ・・・」」」
そこで宝条にルクレツィアの事を問い掛けるヴィンセントだが、返ってきた返答にヴィンセント以外の三人の表情が揃って不快そうに歪んだ。宝条らしいと言えばらしいが、全く情といった物などないといった歪な笑みの返しに。



‘ガァンッ!’



「「「っ・・・!」」」
・・・だが次の瞬間ヴィンセントが銃を抜いて宝条の頭に銃弾を撃ち込み、悲鳴すらあげずに倒れこんだ様子を見て三人はヴィンセントに反射的に視線を向けると・・・短い付き合いではあるがヴィンセントが見せる筈がないと思われていた、怒りを盛大に浮かばせた表情があったことに息を呑んだ。それだけ取り繕う事が出来ないくらいにヴィンセントが怒りを抱いたのだということを感じて。









.
8/15ページ
スキ