英雄と呼ばれた男は真実を知り、仲間と共に堕ちる道を選び幻想になる 前編

(俺は・・・俺は一体、何者なんだ・・・?)
・・・ニブルヘイムの神羅屋敷の隠し通路の先を歩きながら、セフィロスは一人苦悩を抱えていた。与えられた任務に従い訪れた場所で見たまさかの光景に加え、二人の友がまさかの事をされていたことから敵となって死んだこともあって、自身も同じような何かがあって常人とはかけ離れた存在となってしまったのではないか・・・という事を始めとした考えが頭の中でグルグルと回っていた為に。
「・・・くっ・・・」
‘ガンッ!’
そんな中でセフィロスは岩壁をくりぬいたような通路の先にあった木の扉が正面と左側に二つ見えたのだが、イラつきを抑えきれないというように左の扉に力一杯に拳を叩きつけた。



・・・普段のセフィロスなら有り得ない、そして本来の歴史なら起き得なかった筈の行動。これが運命の分かれ目となった。



ガッ!
・・・そうして木という見た目に反して並の攻撃では破壊出来ない筈の扉は、手加減を忘れたセフィロスの拳であえなく鍵の部分が壊れて地面に倒れこんだ・・・主に正宗で戦うから徒手空拳での戦いはないと思われがちなセフィロスだが、素手でも並の魔物程度相手にならないくらいに強い上にセフィロス以外扱えないとされる正宗を平然と扱えるその腕力を考えれば、多少頑丈なくらいの扉なら拳で叩き壊すくらいは訳はなかった。
「・・・なんだ、この部屋は?内装も悪趣味だが、それ以上にこの棺桶は・・・」
そうしたセフィロスは扉を壊して見えた先にあった部屋の光景に、拳をぶつけて苛立ちが少し消えたのと部屋の異様さに落ち着きを取り戻してその中を観察する。
‘バタン’
「・・・何だ、騒々しい。私の眠りの邪魔をするな」
「・・・誰だ、一体?」
しかしそこで棺桶の蓋が勢いよく開き、同じように棺桶の中から飛び出して来た雰囲気の暗い男の登場からの言葉に、セフィロスは訝しげに眉を寄せる。自分がやったことであるが、そこで予想もしていなかった人物の登場に。
「・・・そちらから名を名乗るというなら私も名乗ろう。扉の鍵を開けるでもなく壊してくるような人物に名乗るような義理は何もないと言いたいが、何かを聞きたいというならまずそちらから名を明かせ」
「・・・いいだろう。俺の名前はセフィロスだ」
「っ!?・・・セフィロスだと・・・!」
「・・・む?」
そんな人物は名を名乗るよう無愛想にセフィロスに言うが、出した答えに途端に驚きを浮かばせた男にまたどういう事かと訝しげな反応を浮かべる。
「・・・俺の事を知っているのか?」
「・・・私はセフィロスという名の人物は一人しか知らない。それが本当に私の知るセフィロスなのかを確認するために聞くが・・・お前の親は宝条か?」
「何っ・・・宝条だと・・・どういうことだ、それは・・・!?」
だがそこで先を聞く中で男から返された宝条という名にセフィロスが驚愕を浮かばせるが、男は少し考え込むように目を閉じた後に目を開けて口を開く。
「・・・どうやらそちらも何やら訳ありのようだな。何があってここに来たのか、話してみろ。私も答えられることには答えるようにしよう」
「・・・分かった。話をしよう」
そうして男がじっくりと話をするというように言ってきたため、セフィロスも重く頷き返した。明らかに男が何かを知っているという雰囲気があるのもそうだが、宝条という名前を聞いたこともあってこの機会を逃すまいというように・・・









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