運命に流され翻弄された同じでいて違う者達 後編

「・・・さっきから何の話をしている、お前ら」
「・・・個人的な話をしているだけだが、なんだお前は?」
そんな時に場に現れたのは比古であり、その口調にリオンは多少不機嫌そうに答える。
「仕事をしていたら声が聞こえてきたから何かと思ってここに来ただけだ。話を聞かれたくないからこの辺りに来たんだろうが、本当に人に聞かれたくないならもう少し場所を考えて話をするんだったな」
「・・・確かに目に見える範囲に人がいないと安心しきっていたが、ちゃんと誰もいないかを確認するべきだったな・・・」
だがリオンに臆すことなく返す比古の言葉に、リオン自身も周りを見ながら自身らの不手際を感じた・・・確かに人里から離れた場所であるが、焼き物の窯はともかく近くの小屋に人がいないと勝手に断じた事に。
「・・・まぁいい。見たところお前達は外来人であることもそうだが、余程の訳ありであることも話の中身から伺えた。だから忠告をしてやろう」
「・・・忠告、だと?」
「あぁ。そっちの黒い方に言えることとして、何を差し置いても死にたいというような気持ちが無いからこそ、今そうして悩んでいるというのが俺からは感じられたと言いたいんだ」
「「・・・何?」」
そんな様子にタメ息を吐きたそうに面倒な様子を浮かばせながら比古は二人を指差しながら忠告と告げるのだが、その中身に二人ともに揃った顔と声で呆気に取られた。言われた中身がどういうことなのか突拍子過ぎて理解出来ないというよう。
「聞いた話によれば人というものは生きたいだけでは生きられないと同時に、死にたいだけでは死にきれる物ではないそうだが・・・聞こえてきた話の中身から考えるなら、確かに黒い方は生きることを放棄しているようには思えはする。しかし俺から言わせればそっちの黒いのは生きるなら生きるででもだが、死ぬなら死ぬででも何か理由という名の指針を欲しているんではないかと思ったんだよ・・・自分がどうするべきなのかとな」
「何・・・?」
「確かにそっちの黒いのはお前と比べれば、雰囲気としては落ち着き払ったような空気を持ってはいる。だがそれは黒いのは自分がやるべきことをやり終わったという気持ちがあるからだと見たが、その経験が却って自分がどうしたいか分からないという気持ちに繋がっているのだろう・・・生きることを放棄しているといったように見えたという言葉が聞こえたが、俺にはそう見えるぞ」
『・・・それは・・・』
「・・・成程、今の言葉を聞いて納得が出来た。シャルの言葉が合っていると思いかけたが、生きる意味も死ぬ意味も見出だせて無いからこそ自分がこうなっているのだということをな・・・」
『・・・坊っちゃん・・・』
比古は更に話を進ませいかに二人の違いを感じたのかとリオンに話していき、その中身を受けてジューダスが当たりだというように俯きながら答えた沈痛な声に、シャルティエもまた坊っちゃん呼びに戻る形で心配そうな声を漏らす。
「・・・俺は聞こえてきた話を自分なりに噛み砕いてそう言っただけだが、生きる意味か死ぬ意味かどちらかは分からんが黒いのからすればどちらかを早く見付けたいだろうし、その剣に白い方は生きる意味を見付けてほしいとでも思っているのかもしれんが・・・話に聞く限りではそこに来た閻魔様が黒い方の命運を左右する存在なんだろう」
『っ、映姫様・・・』
「・・・」
比古がそのままに話を続けていくのだが、ジューダス達の後ろに視線と声を向けたことに揃って視線を向ければそこには複雑そうな表情を浮かばせる映姫の姿があった。









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