運命に流され翻弄された同じでいて違う者達 後編

「そうなるが・・・だからこそ言えることとしては、もうマリアンに関する事はこれ以降は口にすることなく生きていけ。一応お前は生きているから八雲紫の力を借りられれば元の場所に絶対に帰れんことはないだろうが、それを選ばんというなら後の事はあの世界で彼女自身がどう生きていくのかという話になる・・・お前が裏切り者という汚名を覚悟の上で彼女の重荷になっても近くにいたいという気持ちがあるかはどうかは知らんが、戻ると選ばんならもう彼女に関することは口にすることなく過去の存在としろ」
『ぼ、坊っちゃん・・・』
「・・・こいつの言っていることは正しい。そして僕はスタン達に後を託して死ぬことを覚悟して水に呑まれることを選んだ身だ・・・何の因果か僕はここで九死に一生を得た身ではあるが、それで八雲紫に生きているから元に戻りたいなどと言うのはあまりに都合が良すぎる上に、戻ったとしても今更どの面を下げてという話になることに加えて、マリアンやスタン達に周りとどう向き合うのかに付き合うのかという話になる・・・それらを考えれば僕は元の場所に戻らん方がいいだろうし、マリアンの事ももうここで吹っ切った方がいいと僕は思った・・・僕は実質的にはあそこで死んだ人間なんだからとな・・・」
『坊っちゃん・・・』
そうしてジューダスが厳しい言葉を口にしていってシャルティエが声を漏らすが、リオンが頭を下げて首を横に振りつつ口にしていった言葉に悲し気な声を漏らした・・・ジューダスの言葉から様々に心残りはあれども、理屈としてリオンが選ばなければならない事だと理解したのだという様子に。
「・・・そう決めたのなら次はシャル、お前だ。お前も僕に何か言いたいことがあるのだろう?」
『あ・・・は、はい・・・』
だがリオンのそんな様子に間を置かずジューダスが続けるようにとシャルティエに話を振ると、困ったといったような声を漏らしながらも否定出来なかった。
『・・・その、まず僕達に関して言わせてもらいたいことなんですが、これからも紅魔館にお世話になることになりました・・・やはりこうして生きている以上坊っちゃんも衣食住は必要だという事になりますけど、僕達には紅魔館の方々以外に頼れる人達がいなくて・・・』
「生きていく事を考えるならやむ無しだと判断したといったところなんだろうが、それを僕に言って何になる?言っておくが僕は映姫の判断待ちだから、紅魔館に行くなどとは言わんぞ」
『そこです・・・坊っちゃん、いえ貴方は映姫様が死ねと言われたならそれを素直に鵜呑みにするのかということなんです』
そうしてシャルティエが報告をしたことにジューダスは冷静に返すのだが、その答えに坊っちゃんから貴方と呼び方に口調を改めて真剣に言葉を向ける。
『貴方がそのように割り切った様子でいられるのは貴方も納得済みで消えることになった上で、カイル達との旅で貴方が満たされたこともあるからなんでしょう・・・ですがそんな貴方の姿は生き急いでいるというか、死ぬことが目的なんではないかと思ってしまうんです・・・摂理だったりエルレインのせいだったというのがあっても、生きることを放棄しているんではないかと・・・』
「・・・生きることを放棄、か・・・」
そのまま続けて出てきたシャルティエの悲痛な気持ちが込められた言葉に、ジューダスはそっと目を伏せた。ジューダス自身シャルティエの言葉を否定しようにも、端から見たならそう見えたのだという事を理解して。









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