意識の境界に認識のすり合わせ

「では彼女と対面する際は前のように思いあっているといったような接し方はしないようにするのですか?」
「そのつもりだ。ただもうラルゴの事が無いことからナタリアがどうなるかは分からんが、どちらにせよ俺はナタリアを何よりも優先するような心積もりにはもうなれんのだけは確実だ」
「やっぱりそうか・・・」
「・・・前の事にその関係からお前がそういう気持ちになることは俺も理解はしている。だが恋と言うものは一瞬で覚めるとはよく言ったものだと俺も思うが、覚めてしまった恋をどうにかするには当人同士ですり合わせや考え方の改善が出来なければどうにもなるものでもない・・・だがこういった場合に恋が覚めた方の俺が自分の理想通りの恋人、もしくは伴侶にするために尽力するなどというのは最早想い合っている人物に対するような行動ではない。そこまで行ってしまえばもう一方的な教育、言い方が悪くなるのを承知で言えば単なる洗脳に等しい物だ」
「っ!」
その上でジェイドの問い掛けに是を返すアッシュにルークはキツそうな表情を浮かべたが、そこから続いた言葉に衝撃を受けたように目を見開いた・・・やりすぎればそれこそアッシュの言ったような事になりかねないと、ルーク自身感じた為に。
「・・・俺も一度はナタリアを愛した身ではあるし、悪い人間ではないとは付き合いの長さから知ってはいる。だからこそ心から深く愛せないとは言え、必要以上に残酷な事をする気にもならない・・・俺がしてやれるのはナタリアが求める『ルーク』としてではなく、俺が俺としての義務感を持って接してやることだけだ。端から見れば残酷な事に思うかもしれんが、俺も俺としての考えがある。これが精一杯だ」
「アッシュ・・・」
「この辺りで引いてあげてください、ルーク。彼も一人の人間として様々に考えた上でそうするという結論を出したのです。それを無理にナタリアの為にと言うのはアッシュの事を考えていない物と同義になりますよ」
「っ・・・分かった、ジェイド。確かにそうだな・・・」
それで最後とばかりに自身の考えを余すことなく伝えていくアッシュにルークは何か言いたげなようにしていたが、ジェイドの制止の言葉に確かにと力なく頷いた。これ以上の強制は出来ないと。
「・・・まぁこう言っておいてなんですが、下手にナタリアを気遣うように行動するよりはアッシュのようにした方がナタリアの為にも私はいいと思いますよ。彼女は自分と隣り合う理想の存在である『ルーク』を求めていますが、彼は前回でそれらを達成して彼女はそれで満足していました・・・そう言った意味ではアッシュの事を理解出来ていないナタリアは哀れとも言えますが、そんなアッシュの気持ちをおもんばかれなかったり察することが出来なかったナタリアの方に問題がある・・・少なくとも私はそう思います」
「・・・アッシュの気持ちを考えられなかった・・・それってどっちかって言うと、アッシュなら自分と同じ考えだみたいな感じだと思うけど・・・」
「まぁ間違ってはいないでしょうが、ナタリアが考えを放棄しているという事には変わりはないでしょうからね。そこのところはあまり深く気にしない方がいいですよ」
「・・・そうなるか・・・」
ただジェイドも一応はこれでいいとフォローは入れるのだが、結局はナタリア自身のイメージが良くなる訳ではない中身だった為にルークは何とも言い難そうな表情を浮かべるしかなかった。









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