運命に流され翻弄された同じでいて違う者達 前編

「それで、僕はこれから裁かれるのか?」
「・・・貴方自身自分が本来あるべき形で生きていい存在ではないと見てそう言っているのでしょう。こんな形で生きていることはおかしいと。ですが確かに貴方の状態については私もどうかとは思いますが、それでも貴方は生きている事に変わりはありません・・・ですので今の貴方を裁判にかけることは出来ません」
「・・・生きているから、か。ならどうすればいい?そう聞いたからと言って裁判をしてもらいたいから自殺しようというような気持ちまでは僕にはないぞ」
「そんなことをすれば裁判にかけるまでもなく地獄行きは確定になりますが、そうなるとどうしましょうか・・・」
ジューダスはそんな空気は気にせずこれからの事についてを聞いてくるのだが、映姫は生きているからこそ悩むといったように考え込む。
「・・・一応確認しますが、元の世界に戻りたいという気はないんですね?」
「無いな。僕は既に死んだ身であることもそうだし、元の場所に戻ってカイル達と会いたいのかというように聞きたいのかもしれんが、もう今となってはエルレインのやってきたことの影響下から解き放たれたあの世界は、僕やカイル達が旅をした世界とは違う本来あるべき歴史を辿っていることだろう。そんな世界に死人が戻りたいという理由だけで戻っていいはずがないし、浄波瑠の鏡で見たよう僕は十分に満足出来た。だから戻れてもあそこに戻る気はない」
「そうですか・・・」
それで先に確認だと元の場所に未練があるかを映姫は問い掛けるが、一切ないとキッパリ言い切るジューダスの様子にそっと一つ頷く。
「・・・分かりました。そう聞けたのなら外に出すためにではなく、一先ず貴方の処遇を決めるのを待ってもらうために博麗神社に向かうことにします」
「博麗神社・・・話によれば外に出るための結界の入口と、その入口を開ける巫女のいる場所だったな?」
「えぇ。まぁ帰りたいという外来人を戻すことも役割ではありますが、巫女の役割の中には外来人の保護も含まれています。流石にずっと暮らすというのは難しいにしても一週間程、貴方のことを引き受けてもらえるように話をしに行きます」
「いいのか、それで?」
「少なくとも生きている貴方をここに置くよりはいいと思っての事であると共に、博麗神社は八雲紫が不定期ながらも他の場所に比べれば顔を出しやすい場所です。浄波瑠の鏡で貴方の過去を見た上でその性格を考えれば幻想郷をどうこうといったことはしないと見ていますが、下手に人里に任せて事情を知らない彼女がそこで貴方に何らかの行動を仕掛けてくることも無いとは言えませんから、ちゃんと説明して霊夢の近くにいてもらった方がまだ面倒にならないでしょうからね」
「面倒事を避けるための処置か・・・まぁこちらとしてもいたずらに事を荒立てたい訳ではないから、その言葉に従わせてもらおう」
それで考えをまとめた映姫が博麗神社に行くことによるメリットを言葉にしていき、ジューダスもそれらの話に反対する要素はないと頷いて返した。理にはかなっているからと。


















・・・そうして映姫は小町に声をかけ、ジューダスと共に博麗神社に向かっていった。尚声をかけた時には小町は仕事をサボっていて説教は後にするから覚悟をするようにと言われていたのだが、ジューダスは特に庇いだてることも何も言及はしなかった。これが二人にとっての然程珍しくもない日常なのだろうと感じた為に。









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