最後の陸の黒船の剣の使い手と天剣の使い手

「前世について俺は自分の生き方を後悔しなかった。飛天御剣流を継承した後に剣心を引き取って剣を教えた時にこそ喧嘩別れはしたが、それでも京都で再び顔を合わせた時にはあいつは飛天御剣流の理を自分なりに噛み砕いて動いてきたと聞いた上で、その後も生きていったと聞いた事にはな。そして剣心に嫁の最期を聞いて俺はそれらについてを受け止め、数年後に死ぬことになった・・・これまでだったら俺は何を思うこともなかっただろうが、何の因果か二度目の生を受けることになってから俺は考えるようになっていった・・・何故俺なのかに、こうして二度目の生を受けるべきは剣心達ではなかったのかとな」
「それは・・・」
「分かっている。この外套があったということから俺が飛天御剣流という剣術を誰にも継がせず終わらせたことにより、俺という継承者も含めて共にこの幻想郷に忘れ去られる形でここに来たということはな。しかし自分で考える中で分かっていることではあるが、理屈ではない部分では考えることがよくあったんだよ・・・何故だ、とな」
「・・・比古さん・・・」
そうして比古は自身の考えていたことや気持ちを吐露していくのだが・・・しばらくの時間を共にしていて弱音や弱い姿を見せることなどなかったが、そんな生活の中で見ることが無かった上にイメージにない姿に宗次郎も変に声をかけることは出来なかった。






・・・前世も含めて比古と最も長い時間を一緒に寝食を共にしたのは剣心であってその頃からもう変わらない比古であった。自信満々の自信家であり、自分の事を全く疑うことのない強さを持った存在だった。

しかしそんな比古でも人間である・・・前世でも昔は飛天御剣流を扱えて目の前の人々の命を救えても何も変わらないことに苦悩した時期もあった上で、剣心に奥義を授ける際に思うところから一睡も出来なかったくらいには人間らしい部分もあった。

だからこそというか人付き合いが嫌いという面はありつつも、飛天御剣流という剣術の跡を継ぐに相応しい人物だと比古の前の継承者から外套と名を譲り受けるくらいには、人間としての思いやりの気持ちはあるのだが・・・それが故にこうして宗次郎の前で吐露したのである。人前には決して出さなかった人間としての弱い部分を、今ここで出さないといけないという流れもあって。






「・・・だがそれで事実が覆る訳でもないし、この幻想郷で俺が二度目を生きている事もまた事実だ。そして一度生きたからもう二度目を生きる意味などないというような考えを持つ気もなかったから、ここでこうして生きてきたが・・・前世を抱えたまま一人で生きていく事が辛いという気持ちは無かった。しかしその代わりに前世を抱え黙りこむことに閉塞感を感じていたことにお前や萃香の話から気付いたんだ。俺も前世を振り切れてないというより、俺の過去と間接的にでも関わりがあるお前だからこそそれらを共有出来るお前に悪い気持ちを抱いていなかったんだとな」
「・・・共有、ですか。そして僕達二人を結び付けてくれた存在が、緋村さんだったと・・・」
「そうだ。そしてだからこそ答えるが、お前がここにいたいと言うならそれで構わん・・・と言っておこう」
「・・・いいんですか?」
「認めたくないことではあるが・・・俺自身どこかで物足りないと思っていたことを理解させてくれたからな。それにお前はちゃんと働いてくれるのもあるから、ここに置いても問題はないと見てこう言ったんだ」
「・・・ありがとうございます、比古さん」
だからこそ・・・比古は自分の気持ちや考えをまとめた上でいてもいいと答えるその中身に、宗次郎はそっと頭を下げた。ただただその言葉に感謝するよう。









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