最後の陸の黒船の剣の使い手と天剣の使い手

「・・・それでそういったことを考えていく内に無理に戻ることを選ぶより、このまま比古さんの元にいた方がいいんじゃないかって思うようになってきたんです。元の場所に戻りたいっていう気持ちは無くなってきたというのもそうですけど、なんというか比古さんと一緒にいると落ち着けるって思えてきちゃって・・・」
「俺と一緒が、だと?」
ただまだ宗次郎からしての話は終わっていないためにその言葉は続いていくが、その中身にたまらず眉を寄せた。本気で言っていることなのかと疑うように。
「ここでこうして暮らしている内に感じちゃったんですよね・・・旅をする内は買い物をする時だったり同じようにどこかに旅をしている人だったりとお話をすることもあったんですが、そう何かを感じることも無かったんです。ただこうして比古さんと一緒に暮らしていると、落ち着けるって思ったんですよ」
「何故だ?別に俺はお前に特別厳しくも優しくもしたつもりもないが」
「・・・なんというか、僕の事を知っていて接してくれる人がいるって事に僕自身ホッとしたっていう気持ちがあったんです」
「・・・知っているからホッと、だと・・・?」
宗次郎はその理由について話していくのだが、途中のその言葉に思わず比古は眉を寄せる。
「・・・志々雄さんの所にいる時は任務を任されて一人でどこかに行くことはよくあったんですが、そうして帰ってきたら志々雄さん達が出迎えてくれるという事を僕は心地よい物だとその時は気付かずにただ受け止めるばかりでした。ですが数年ほど旅をしてきてあまり一ヶ所に長く留まる事もない生活をしていて、こうしてこの幻想郷に来て比古さんと共に暮らしていくようになって感じていったんです・・・帰る場所があるということがどれだけ心地よい物なのかに、自分を知ってくれている存在がいてくれるということにホッとするものなのだと」
「・・・だからお前は俺の元にいたいと言うのか?」
「はい・・・志々雄さんや十本刀の皆さんは亡くなったり散らばったりという形でもう集まることは出来なくなったのは分かっていますし、緋村さんの所も今言ったような理由から無理に戻る気にも行く気にもなりません・・・ですから出来ることならこのまま比古さんと一緒にここで暮らしたいんですが、ダメですか?」
「・・・そういう理由からか・・・」
そして宗次郎がいかに考えていった上で結論を出したのかについてを口にした上で、これからも一緒に暮らせないかと伺うように聞いてくる姿にそっと頭に手を当てる。
「・・・お前の言葉を聞いて俺も自覚出来たし、萃香の言葉を理解出来た。どうやら俺も知らず知らずの内に自分の前世に引っ張られて囚われていたのだとな」
「・・・そうなんですか?」
それで手をどけた比古から出てきたタメ息をつきたそうな様子の意外な告白に、宗次郎も意外そうな様子で目を瞬かせた。悩みを持つような様子を見せず、ましてや誰かとの繋がりを求めるような人物ではないというよいに宗次郎からも見えた為に。
「言いたいことは分かるし、俺も前世までの俺だったならそんなことなど考えはしなかっただろう・・・今となって萃香の言葉を思い出した上でお前の言葉を聞いた結果として、今の俺はそうなんだと気付いたんだよ」
比古はその反応を当然としつつ、自分の考えたことについてを話していく。









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