最後の陸の黒船の剣の使い手と天剣の使い手

‘ガゴシャッ!!’



・・・そして次の瞬間には比古はマネキンの後ろまで通り過ぎると共にマネキンは九つの攻撃を受けたことにより、形容しがたい音を出して五体が引きちぎられるように見るも無惨に壊れ・・・残骸は地面に倒れ落ちる前に姿を消していった。
「おぉっ!これが清十郎の本気の剣かい!いいねいいねぇっ!私でも直に受けりゃただじゃすまないだろうねぇ!」
「あはは・・・そこ喜ぶところなんですか?」
「鬼としちゃ強い人間は大歓迎さ!それも自分を殺せるかもしれない人間の存在ってのはね!」
そんな様子に萃香は一層テンションを高め、宗次郎の確認の言葉にだからこそと返していく。強い者が好きでありその強者との殺しあいを望むのが鬼だと。
「鬼は放っておくとして、お前から見たらあの技はどう見えた?あの技を放つ前の言葉から弟子にあの技を向けられたと聞いたが・・・」
「・・・正直に感じたことを言わせてもらうなら、縮地の一歩手前では厳しいかなと思いました。緋村さんのあの技と比べると、今の攻撃は威力と速度ともに段違いでしたからね・・・一歩手前の縮地では全てをかわしきるのは難しいというのが僕の見立てです」
「だろうな。剣心が言っていたが確かにお前は早さにおいては飛天御剣流を上回っている。俺もその点に関しては先程の手合わせで十分に理解したが、俺と剣心では実力が違う。縮地を全力で使われれば俺の九頭龍閃でもかわされるだろうが、それでもお前にそう言わせるくらいには差があるということだ」
アベルがそんな姿に構わず宗次郎に感想を求めると率直に感じたことについての答えが返ってきて、比古はだろうなと自信を覗かせながら口にしつつ戻ってきて納刀した後に外套を拾い上げて再び羽織り直す。
「・・・さぁこれで条件は果たした。約束を違えるようなことはするなよ?」
「分かってるって!んじゃ私は別の所に行って呑んでくるから結界を解いてくれよ!」
「うむ」
それで萃香に視線と確認の声を向けて楽しそうに了承した後、シャカが頷く。
「んじゃまたな~、清十郎!」
そうして結界が消えたのを確認したのかしてないのかはさておきと、萃香は別れの言葉を機嫌よさそうに口にした後に体をその場から霧消させて消えていった。
「やれやれ・・・世話になったな。これで俺達は行かせてもらう」
「また何かあれば来たまえ。今日のように何かをするでも構わぬし、座禅を組みたいなり話をしたいなどの些細なことでも構わんよ」
「分かった。ではな」
そんな様子を見て呆れたように漏らしてシャカの方に礼を言い、いつでも来るようにとの言葉を受けて比古は宗次郎と共にその場を後にしていった・・・


















・・・それで人里に戻ってきた比古は、宗次郎と話を合わせた上で慧音に会いに行った。昨日の夜中に宗次郎が幻想入りしてきて自分のところに来たのだが、帰る場所もないままに旅をしていた身らしい上に明治という時代から来たらしくて話に聞いた限りでは外に出てもどうしようもないだろうということで、しばらく話をした結果として自分のところに手伝いという形で置くことにしたという話をしに。

ただ慧音はその話に驚きを隠せないまま、本気なのかと確かめてきた。人里の者達との交流など積極的ではないようにしか行わなかった清十郎が、どんな風の吹き回しなのかと。

まぁそこについてはカチンと来つつも、比古は働き手を増やすと共にどう働いてもらうかを人里側に考えてもらうのは俺も含めて面倒な流れになるのは目に見えているからそう考えたんだと返すと、慧音も若干苦笑しながらもそういうことならと納得した・・・実際の所、外来人が入り込んできて運良く人里にまで来ても働く場所などそうそう簡単に見付からないというか、働くどころか生きる意志すらないような外来人も時たまに来るものだから、外来人の受け入れが必ずしも歓迎されるものではないのは慧音も知っていた為に。

それで話がまとまった所で慧音と共に人里の代表とも言える稗田邸に向かい、宗次郎についてを話を通した比古は二人で共に小屋へと戻って生活を始めていった・・・









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