最後の陸の黒船の剣の使い手と天剣の使い手

「・・・今の話を聞いていたなら分かるだろうが、今の話については黙っていてくれ。これらの話が表に出れば色々と面倒になるのは目に見えているんでな」
「まぁそれはいいんだけどさ~・・・折角だからその外套を脱いで、本気の剣を披露しておくれよ。あんたが私と戦う気はないってのは知ってるが、せめてあんたがどれだけ強いのかってのを見てみたいんだよ」
「・・・それで引いてくれると言うのか?」
比古は仕方無いとばかりにまずは黙るようにと願う言葉を向けるが、萃香が返した言葉に予想外というように漏らす。条件があまりにも緩くないかと。
「何て言うかさ、自覚はないかもしれないが宗次郎に色々と話してたあんたの姿を見てたら思ったんだよ・・・その時のあんたはイキイキしてるってさ」
「・・・イキイキだと?」
「私が感じてるだけだから否定するかどうかは別に関係無いことだよ。けど私はあんたの事は時々様子を見ていたんだが、陶器を焼いている時だとか普通の時に比べりゃ宗次郎と剣を交えてる時や高説を述べてる時の方が断然にイキイキしてるように見えたんだよ」
「・・・それは・・・」
「・・・あんたもどこかで感じてたんじゃないのかい?こうしてこの幻想郷で一般人に紛れ込む形で過ごしちゃいたが、あんた自身どこかでそうした生活に物足りなさを感じて何かを求めてたんじゃないのかってね」
「・・・」
だがそこで萃香が口にしていった比古に対して自身が感じたことの推測の言葉に、比古当人は何とも言いがたそうに表情を歪めた。萃香の言っていることは当たっていると言わんばかりに。
「・・・その辺りに関してあんたも向き合ってみりゃ、宗次郎と同じく変われるんじゃないかと見たのさ。人として一皮剥ける形でね・・・ま、本当なら私とヤり合えと言いたかったがそこは勘弁してやるさ。まぁその代わりとしてあんたの剣を見せろって言ってんだけどね」
「・・・分かった、見せよう」
そうして真剣に表情を作ったかと思えばまた面白そうに笑う萃香の姿にもう考えを放棄するように比古は頷き、外套を脱ぎ地面に置くのだが・・・
「おうおう!やっぱりいいねぇ!あんたの体は!」
「・・・スケベ親父の戯言みたいなことを言うな」
・・・そこで露になった服の上からでも分かる筋骨隆々な比古の体に萃香のテンションが上がるが、比古は対照的にテンションが下がりながらも刀をもう一度抜いて辺りを見渡す。
「・・・何を探してるんですか?」
「試し切りの材料だ。折角だから俺の最も得意とする技を見せようと思ったが、竹では細くてかなわん」
「ならば幻影を出してやろう。それを相手に剣を振るいたまえ」
「・・・助かる」
宗次郎はその行動に首を傾げつつ何をと問い試し切りの材料が欲しいと返すと、シャカが目の前に手を出すと比古達は馴染みがないが、人の型のマネキンが前方の少し離れた所に唐突に現れたことに不可解そうながらも感謝をしつつ刀を構える。
「・・・剣心からは宗次郎がこの技を縮地の二歩手前の早さで完全に避けきった事については聞いている。その上で俺の本気のこの技を見せてやろう・・・っ!」



「飛天御剣流・九頭龍閃!」



・・・そうして宗次郎に言葉をかけつつ比古は目を大きくカッと見開き、そのマネキンへと本気の威力で技を放った。一瞬で九の攻撃を対象に叩き込む飛天御剣流の神速を最大限に活かした、比古が最も得意とする技を。









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