最後の陸の黒船の剣の使い手と天剣の使い手

「志々雄はお前が自分の手下として使い物にならないほどに弱かったとしたなら、お前を早々に見捨てるか切り捨てるといったような事をしていただろう。だがお前は十本刀の筆頭になるくらいには強くなった・・・その上で配下だった頃のお前は志々雄に歯向かうなんて事を微塵も考えなどしない様子だったからこそ、志々雄からすればもうそれでいいとなったんだろう。こいつは俺の次に強い男で従順な存在だ、だから歯向かわないなら別に何をしようがどうでもいい・・・というようにな」
「それは確かに、志々雄さんの性格だったならそうだと思いますが・・・」
「そうだろうが、だからこそ志々雄はお前を剣術だけでなく精神的にも成長させようといった考えや気持ちなどを持ち合わせることはなかった。いや、むしろそういった物は邪魔でしかないとすら言われていたなら思っていたことだろう。お前の剣は事前知識なしで戦えば大抵の者にとっては最悪と言っていい程の初見殺しの剣であることもあり、『瀬田宗次郎』という存在はこのままでいいとな・・・だがそれで剣心と戦った結果として、志々雄に従っているだけで自分についてを考えることのなかったお前は動揺してしまい負けることになったというわけだ」
「・・・そう考えると、僕は志々雄さんの期待に応えられなかったんでしょうか・・・?」
「負けたこと自体はお前が自身を制御しきれなかったからになるが、志々雄からすればお前が勝つならそれで良しで負けたならお前が弱かったから・・・弱肉強食だと断じていたのは想像がつく。自分が作り上げてきた存在であるというのに、負けたことに自分に責任など一切ないと疑わずな」
「・・・志々雄さんなら確かにそう言うでしょうね・・・」
その上でいかに志々雄がどう宗次郎を見ていたかに、敗北についてを考えたのか・・・それらについてを話して指を下ろした比古の言葉を、目を伏せながらも宗次郎は否定出来なかった。弱肉強食と常から口にしていた志々雄は負けたらそいつのせいだと言うのは、志々雄が死ぬまで一番長く側にいた宗次郎自身よく分かっていたために。
「・・・これで志々雄がどうお前の事を考えていたのかについての推測は以上で、お前が旅をしてきたのは自分の答えを知るためということだが・・・俺の私見から言わせてもらうなら、お前は剣心に敗北したからそれで旅をしたとは言いつつも、そうして答えを求めて旅をすることが目的になったというより、次第に手段が目的に変わっていったからこそ以降の事をどうすればいいかが分からなくなったのだろうと見た」
「手段が目的、ですか?」
「あぁ、そうだ。そしてそうなったことからお前がこの幻想郷に幻想入りしたことの大本ではないかと俺は見た」
だがそこで志々雄の考えは終わりだとしつつも、宗次郎自体の幻想入りに繋がる悩みについてに比古は言及していく。
「確かにお前は自分の答えを見付ける為に旅をしてきたのだろう。だがそうして一人で旅をしてきたお前は答えを求めつつも、どこかで考えていたんじゃないのか?・・・答えが見付かるかもそうだが、そうして見付かったとしてもそれからの自分はどうすればいいのかと」
「・・・それは・・・」
「あくまで俺の推測だ。否定するかどうかは俺の話を聞いてからにしろ」
そのまま比古が宗次郎はいかな考えをどこかに持っていたのか・・・それらを話そうとする中で当人が何か言いたげな声を漏らすが、すぐに制止した上で続きを語っていく。









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