最後の陸の黒船の剣の使い手と天剣の使い手

「と言ってもそれが悪いという訳ではない。あの速度を十二分に活かすには下手な小細工を弄した攻撃を繰り出すよりは全然マシな行動だと言える。しかし剣心からの事前情報があった上でお前の行動をよく見てみれば、そういった動きによる翻弄からの斬擊を見舞うという戦いかた以外の引き出しがあるようには見えなかった・・・この辺りは初見の剣心が見切ることが出来なかったのは仕方無いと言えるだろうが、長年側にいる形でお前の戦う姿を見てきた志々雄からすればそういった引き出しの少なさをハッキリと理解していたのは確実だ。そして腕力や技に駆け引きの引き出しといったその他諸々においては志々雄の方が上だろうからこそ、お前の動きに慣れていた志々雄がお前に勝てると見たのは当然だというわけだ」
「・・・僕の動きを慣れて知っているから、志々雄さんは僕に負けることはないと見たということですか」
「少なくとも俺はそう見ているし、お前が苦戦して様々な手立てを考えなければならないような戦いの経験を経る事が出来なかったのはお前自身の才能があったが故の事と見ているが・・・俺が言いたいのはここからだ」
しかしと言いつつ比古は志々雄が勝つ理由についての根拠を話していき、宗次郎に受け止めてもらえたところでここからが本題というように漏らす。
「前置きとして言わせてもらうなら俺はお前が笑みを絶やさない理由についてを聞く気はない。だが相応の理由があってそうなったというのは感じた上で、志々雄はお前のそういった部分を見た上で縮地を含めた剣の才能を買って『瀬田宗次郎』という剣士を作り上げたんだろう・・・そしてお前は志々雄の一派として動き剣心に破れて旅をするようにしたとのことだが、その剣心との戦いの最中で向けられた言葉から今までの様子が一転して感情から声を荒げて冷淡な表情になったことを聞いたが、お前がそうなったのはお前のせいじゃない」



「剣心が予想より強かったにしても、志々雄がお前を剣士としてではなく人として強くあろうとさせなかったからだ」



「・・・え?」
・・・そして比古がこれが言いたいことの集大成とばかりに口にした言葉だが、肝心の宗次郎はどういうことかというようにキョトンとした。言っている事の意味が分からないというよう。
「確かにお前は剣士としての腕に才覚は凄まじいが、それで志々雄に勝てるだけの才覚を持っているのにも関わらずそう出来なかったのは戦闘の経験が積めなかった以上に、向上心やら感情から来る強くなるといった気持ちや考えを持てなかったことにあるだろう。言うなればやらないといけないという義務感であったり、軽い気持ちからの物しか持たずに強くなりたいといったような覚悟が無くてそれなり程度にやればいいくらいでな。少なくともこの考えは当たらずとも遠からずといったものだと思うが、違うか?」
「・・・確かに、そうですね・・・僕も鍛練をしないわけではなかったんですが、一緒に鍛練をすることがあった張さんや鎌足さんなんかには自分まいぺーす過ぎるわとか色々言われましたからね」
「まいぺーすとやらはともかく平常心を保つことが悪いとは言わんが、お前の場合はそれが戦いにおいていい意味で働いても自身を高める為の意識の向上においては悪い方に傾いたんだよ。そしてそういった気持ちで十本刀とやらの筆頭になれるくらいにやれてしまえた事が、お前がやる気を出せばそれ以上に強くなり得たという事実と共に志々雄のお前に対する姿勢が見えるんだ」
そうして再度宗次郎を誉めつつもその強さに対する姿勢を言葉にしていき、志々雄の考えがあると当人に向けて指を指す。









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