最後の陸の黒船の剣の使い手と天剣の使い手

「・・・へぇ~、そんなことがあるんですね」
「・・・驚いたり信じないなどと言わんのだな」
「いえ、そういうこともあるんだなと思ったんですよ。それにさっきまでいた山道にはこんな風に近くに家なんて並んでませんでしたから、そういうことなら納得出来ると思ったんです」
「・・・まぁ変に信じないと言われ続けるよりはマシか」
・・・そうして説明を終えた比古だが、青年が変わらず頭をかきながら笑顔のままですんなりと自分の話を受け入れたことを、釈然としない気持ちを抱きながらも受け入れる。比古自身はその時は信じがたいことだと自分の体もあって否定ばかりしていた過去もあり、頑固だった自分と対比してしまった事に少し嫌な気持ちを抱いて。
「・・・それで、どうする?お前がここに来たのは偶然からなんだろうが、外に出たいというならその為のツテを紹介してやるが・・・」
「そうですね・・・急いで外に出たいという気持ちもないんですよね・・・旅の途中だったものですから、ここにいることも悪くないかと思いますし・・・」
「旅か・・・この幻想郷でもそうしようというのは勧めんぞ。さっきも言ったが、この人里の外には外の世界にはいない妖怪を始めとした超常的な存在がゴロゴロ存在している。外と同じように宿を取るなどこの人里以外に人の住まう集落はないし、人里の外で野宿でもしようものならたちまちに妖怪が襲い掛かってくるだろうからな」
「そうなんですね・・・足には自信があるんですが、やはり妖怪ともなると本気の縮地で走っても追い付かれてしまうんですかね?」
「待て・・・縮地だと?」
そんな中で話題をこれからどうするかに変える比古だが、青年が首を傾げながら出した縮地との言葉にたまらず目を細めて制止をかけた。
「・・・今更ながらに確認の為に聞くが、お前の名前はなんという?」



「あぁ、そう言えば名乗っていませんでしたね。僕の名前は瀬田宗次郎と言います」



「・・・やはりそうか・・・」
・・・そうして静かに確認するように問いを向けると、あっさりと言葉にされた名前に比古はたまらず顔を覆うように手を当てた。その名前は軽く聞いた程度ではあるが、どんな存在なのかは知っている為に。
「あの・・・僕の事を知ってるんですか?」
「・・・あぁ、剣心から聞いている。こういった人物が志々雄の側近にいて戦ったということはな」
「緋村さんから・・・そうなんですね」
青年改めて宗次郎も比古の反応にどうしたのかと聞くのだが、返ってきた答えに少し目を大きくしたもののすぐに納得をする。
「しかしそうなると、面倒だな・・・」
「何がですか?」
だがそこでふと比古が眉間にシワを寄せる様子に、宗次郎はどうしたのかと声をかける。
「お前は旅をしていたと言ったが、それなら元号は明治だと認識しているだろう。しかし聞いた話では今の外の世界は明治より百年以上は未来となっていて、明治は遥か昔の時代だとの事だ」
「えっ・・・どういうことなんですか・・・?」
「俺にも詳しいことは分からん。可能性として聞いた話によれば過去に忘れ去られた物であるから幻想郷に時間を飛び越えて引き入れられただとか、似ているようで違う平行世界だとかから呼び寄せられただとかがあるとの事だが・・・その辺りに関してはこの幻想郷だから不思議な事が起きてここにいたと思っておけ。かく言う俺も気付いたらここにいたからここで暮らしているだけだからな」
「そうなんですか・・・ということは緋村さん達はこちらには来ていないんですね?」
「あぁ、俺一人だが・・・何かあいつに話したいことでもあったのか?」
「はい・・・この数年程で旅をしたことについてです」
その理由についてを比古が話していくと宗次郎は受け入れつつも剣心についてを聞いてきた為、否定をした上で会いたかったのかと聞けば頷きが返ってきた。











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