神に最も近い男と神のいたずらで生まれ残った男

「君の悩みは分かった。ただその問題に関しては君自身が自分でどうにかしなければならない物であるし、君自身もそうだと見ているのだろう。だが心配はいらん・・・君がもし破壊を尽くす元の君に戻ったのなら八雲紫が動くまでもなく、私が遠慮なく破壊しよう。だから思う存分悩んでも構わんし、そうなると思った場合でもそうだがそうならなくともここに遠慮なく来ても構わんよ」
「・・・そうなるならともかくそうならなくともとは、どういうことだ?」
「別に私達は特別な時以外にここに来るなとは言ってはいない。何か助言なりなんなりが欲しかったり些細な事でも来て構わんということだ・・・別に私達は妖怪を近付けるようにはしてはいないが、別に妖怪を含めてここに来ることを否定はしていない。だから何か小さな事でも来て構わんということだよ」
「成程・・・分かった。聖と話をした後に何かあればこちらに来るようにしたいと思う」
そしてシャカが以降の事を話す様に最初はゼロは眉を寄せるのだが、来るものは拒まないと言いつつも微笑を浮かべる様子に同じように微笑を浮かべながらそうすると返した。嘘でもなんでもなく本心からシャカが来ても構わないと言っているのが分かるからというよう・・・






・・・そうしてゼロは二人の元から命蓮寺に戻ると言って、離れていった。
「・・・あぁまで言う必要があったのか?確かに奴は造られた存在と言うにはあまりにも思い悩んでいるようだったが・・・」
「・・・サガを思い出したのですよ、私からしての双子座を」
「・・・二重人格に苦しみ、シオンを殺したという男か」
そこでアベルがシャカにどうしたのかというように聞くと、若干の後悔の念が感じ取れる返しに重く漏らす。
「・・・私は教皇として変装して動くサガの事を、悪と正義の狭間に揺れ動きつつもその人格から教皇は正義の存在なのだと何もすることなく仰ぐべき存在として見ていました。その中身が本当に教皇なのかと疑うどころか、興味を持つことすらなく・・・ですが一輝により迷いを植え付けられ、サガの正体が明らかになった上でアテナの前で自害を選んだという結末を聞いて考えるようになったのです・・・サガは悪の心を止められない自分を止めてくれる存在を求めていた上で、私が一人でとは言わずにアイオリアが教皇宮に押し入った時に共に彼を止めていれば、結果はまた違った物になったのではないかと・・・」
「・・・話に聞けば射手座は無理だったにしても黄金だけに限っても蟹座に山羊座に水瓶座に魚座、そしてサガとやらも助かる可能性はあっただろうな。話に聞いた性格からしたならカインに負けず劣らずの正義感の持ち主だとのことだから、後悔に満ちた時間を過ごすだろうがな」
「えぇ、それは想像はつきますが・・・それでも苦心をサガがしていたと考えたならばこそ、私がサガの内心を見て止めていれば変わったのではないかと考えることもあったのです。そして善としてだけでない悪の部分を見た上にアイオリアに幻朧魔皇拳を打ち込んだ姿を見たのに、それらを正義の為だからとその正体に疑念を挟むことすらなかった・・・神に最も近い男などと言われていましたが、私は一体何をしていたのかと一時は考えたものですよ・・・」
「・・・」
そうしてシャカから語られる普段の様子からは全く考えられない眉間にシワを寄せた後悔の言葉達に、アベルは黙ってそれらの言葉を聞いていく。シャカの過去については聞いたが、その詳しい内心に感じたことまでは聞いてなかった為に。









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