神に最も近い男と神のいたずらで生まれ残った男

「・・・時々でいいから我々に永遠亭に患者を連れていってほしい?」
「あぁ・・・貴方達が閻魔様との話で人間にも妖怪にもどちらにもつかず、そして妖怪を殺さずというようにしているのは理解しているけれど、永遠亭というか永淋の評判が上がっていって実際に看てもらいたいっていう声が出てきてるんだ・・・けれどそれで永遠亭まで迷わず行けるのってあそこの連中に貴方達を除いたら私くらいしかいないんだけれど、いつも道案内が出来るほど私も用事がないって訳じゃないんだ・・・」
「成程、それで臨時でも構わんから永遠亭に行く者がいれば護衛と道案内をしてほしいと俺達に言いに来たということか」
「そういうことだけど・・・受けてくれない?そっちに事情があるのは分かるんだけど・・・」
・・・二人の元に現れた妹紅が何の用向きかと話したのは、永遠亭への案内役を頼みたいというもの。
それらについてを話終えた妹紅は気まずげに頭をかきながらどうかと不安げに伺いを立てるのだが、シャカが口を開く。
「構わぬよ、それくらい」
「え・・・いいの?」
「言っただろう、それくらいは構わぬと。とは言え我々がやるのは道案内だけで妖怪を寄せ付けぬようにはするが、退治はしない。その条件でいいなら引き受けよう」
「いや、それでいいんだけれど・・・案外あっさり決めてくれたもんだから、ちょっと意外というか・・・」
「我々が言われているのはどちらかの肩入れをする、もっと言うならば人と妖怪の対立を激化させるようなことは止めてほしいということだ。だがそれで別に人が病に苦しむであるといったような事までもを見捨てろとは言われていないし、妖怪を殺すならいざ知らずその目を欺いて永遠亭に送るくらいは何の問題もないだろう」
「なんだ・・・こんなにあっさり引き受けてくれるなんて拍子抜けしたよ・・・」 
返ってきたまさかのあっさりとした了承の言葉に妹紅はキョトンとしたように確認を取るのだが、シャカが微笑を浮かべつつ大丈夫と語る根拠にガックリと肩を落とした。断られるか説得が難しい辺りを想像していたのが分かるよう。






・・・そうして妹紅が話を人里に通してくると言って帰っていった後、アベルがシャカの方を見ながら口を開く。
「・・・何故あんな願いを聞き入れた?妹紅の様子から俺達が断ることも視野に入っていたのは分かっただろう」
「聖闘士としての本分もありますが、限定的な状況とは言えど人との繋がりを持つべきではないかと思ったが故です。特に人との繋がりに関しては我々二人だけで瞑想しているだけでは見えないものもあるのではないかと思ったからですよ」
「二人だけで瞑想をしていてはか・・・確かに言われてみれば俺達は言われたことがあったからとは言え、排他的になりすぎた部分はあったかもしれんな」
「えぇ。ですので今回の件で少しただ座して待つだけより、多少でも人だとか妖怪であったりと関わりを持つべきではと思い彼女の言葉を引き受けたのですよ。我々にとって新しい風を吹き込むために」
「そうだな・・・ここで瞑想をしているだけというのも悪くはないが、言ってみれば凪の海のような状態だ。自らを見詰めるという意味では何か風を起こすなどして変化が必要だな」
それでアベルが向けたのは何故受け入れたのかという疑問だがシャカなりの考えについてが返ってきたことに、特に反論なく頷いた・・・アベルは特にだがこの迷いの竹林で瞑想するようになってから以前と比較にならないほどに落ち着けた気持ちを得ることが出来たが、どこか変化に乏しい事を感じていたために。









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