神に最も近い男と神のいたずらで生まれ残った男

「まぁそういうことから野宿でも問題はないと君も見ただろうが、ここは迷いの竹林というだけあって普通の者達からしたなら名前の通り迷いやすい造りとなっている。故に我々はここで今言ったような結界を張り過ごすことにする故、映姫様にはそう伝えてくれたまえ」
「・・・分かったよ。んじゃ時々様子を見に来るから元気にね」
そうして迷いの竹林にいることを宣言するシャカに小町もならいいかとばかりに頷き、後ろを向いて手を振りながら迷いの竹林を後にしていく。
「・・・さて、小町も行ったことだから俺もゆっくりと座って自分と向き合うとするか・・・」
「うむ」
そうしてアベルはシャカの隣に座り、目を閉じ集中を高めていく様子にシャカもまた瞑想へと集中をしていく・・・


















・・・そうして二人は迷いの竹林にて過ごすことになるのだが、二人が迷いの竹林で過ごしているということが広まるのには結構な時間がかかることになった。これは迷いの竹林によく関わる者達の中で永遠亭の住民である永淋に輝夜、それに迷いの竹林の中に居を構える妹紅という人物は妖怪ではないから二人の所に行こうと思えば行けるのだが、鈴仙にてゐは妖怪であって二人の元に行こうとしてもどうにもならないという事が起きたからだ。

ただ鈴仙に関しては波長を操る程度の能力ならどうにかならないかという実験が永淋の指示の元でされたことがあるが、これは敢えなく失敗に終わってしまった・・・この辺りはどうしてなのかは永淋にはすぐに見当はついた。確かに鈴仙の能力は強力と言えば強力ではあるのだが本人の資質だったりメンタルや強さによって左右される部分が大きく、言ってしまえばシャカやアベルより未熟で力も劣る鈴仙では波長を見て二人の元に突破することは出来なかっただけなのだと。

ただこれに関しては二人の技量の高さから来る部分の方が比重は高いからというのもあったのだが、だからこそそこら辺の木っ端妖怪はおろか実力のある妖怪相手でも二人の元には辿り着けなかったのだ・・・力を持った外来人が迷いの竹林にて瞑想をしているといった事を聞き付けた射命丸が、どのような事をしても二人の元に到着出来ないというように。

ただそれで転んでもただでは起き上がらないのが射命丸という妖怪であり、二人の元に辿り着けなかった事をほぼ腹いせのような形で自らの作った新聞にて宣伝したのだ。話に聞いて人里の人間達や永遠亭の関係者に取材をしただけで実際に会えた訳ではないが、こういう人物達がいるようだという形でだ。

しかしそういった新聞に載ったことは二人にとって大した影響を及ぼすことはなかった・・・それは元々迷いの竹林は余程の事が無ければ危険な所であって人里の人間が入るような理由などなかった上で、日常的に出入りするのは精々妹紅くらいでその妹紅も二人から事情を聞いて射命丸に話をしてもいいと思った部分だけしか話をしていないので、特に人里の人間が会いに行きたいと興味を示すような事もなかったのだ。

故に二人はその新聞で不都合を被るようなことは特に無かったのだが、時間が経っていって永遠亭というか永淋の薬に薬師としてだけでなく医者としての腕の評判が広まるにつれて、永遠亭に行きたいという人が増え出した時に二人は妹紅の来訪を受けた。









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