神に最も近い男と神のいたずらで生まれ残った男

・・・そうして話は決まったとシャカとアベルの二人は小町の案内の元、幻想郷へと戻ることになった。






「映姫様・・・」
「言いたいことは分かります、八雲紫。あの二人の望み通り涅槃に送らなかった事に関してを批難したいのでしょう?」
「えぇ・・・包み隠さず申し上げるなら」
「でしょうね。彼らの力は私から見ても強大と言わざるを得ませんが・・・長年死者を見てきた私からすれば、彼らは十二分に自分達が死んでいるということを理解していると思えたからこそあぁ判断したのです。生前の正義を是が非でも貫きたいと思うような我は自分の死を理解しているからこそ、それらを達成しようと言う気持ちは薄れていると」
「・・・だから彼らは貴女が持ち出した約束もあり、幻想郷に仇為すような存在ではないと見たからそうしたと?」
「えぇ、そうです」
・・・ただそこに残った紫が不審な物を見るような目を隠さず問い掛けを向けていくのだが、映姫は迷うことなくそれらに対して答えを返していく。二人には幻想郷の事を知ってもどうこうするようなきもちなど無いだろうと。
「無論貴女の懸念も分かりますが、もしそうなった時には私が動きます・・・と言っても彼らを貶めるであるとか、嵌めようなどといった考えからの行動だったなら貴女の方を裁くことになりますけれどね」
「・・・分かりました。その言葉を言質としていただくことでここは私も引きましょう。ではこれで・・・」
ただ一応はちゃんと何かがあれば動くとも言う映姫に、仕方無いというように首を横に振った上で紫はスキマを開いてその中へと入り消えていった。






(・・・思った以上に動揺しましたね、あの八雲紫が。それだけあの二人のことを危惧したのでしょうが、だからこそあのように言った甲斐があったというものです)
・・・そうして紫がいなくなった所で映姫はそっとまだ紫はこの場からいなくなっただけで、スキマの中から見ているかもしれない事を考慮しながら内心で考えていく。自身の考えが成功したことについてを。
(私があの二人を然程危険ではないと見てここで話した事に関しては嘘ではありませんが、かといってはい涅槃に送りましょうとしてしまえば八雲紫の思うつぼになりましたからね・・・あの二人は私の思惑に気付いているかもしれませんが、その辺りは直接私に何かを言ってきたなら対応するくらいにしましょうか・・・)
そして映姫は自身の気持ちもあってと内心で漏らしつつ考えを締め括る。






・・・閻魔という役職もあって白黒ハッキリ物事をつけることを念頭に考える映姫だが、彼女もまた他の幻想郷の実力者同様個人としては我の強い部分を持っている上で、紫の事を様々な事からどうかと思っている部分があった。その上で映姫は自身の判断を間違ってないと思うからこそ、時には周りの迷惑を鑑みずに自身の考えを押し付けることも多々あった。

それ故に今回の事は二人に対して想う所があったというのも確かではあったが、その中に紫に対する嫌がらせめいた気持ちがあったのも確かであった。いつもは飄々としていて胡散臭い上に様々な面倒をかけられてきた彼女に対し、たまには自分がこうしても許されるだろうといったような気持ちがだ・・・この辺りを紫は映姫とぶつかり合う面倒さを嫌って追求しなかったが、その辺りは映姫がこんなねちっこい当て付けとしての行動を自分に仕掛けるためにこうしたと思わなかったのもあってである。実際は映姫としても紫に苦い目を合わせたいという打算もあるという考えがあったことなど、表向きの人柄からそんなことを考えないだろうという楽観視から来たものだと思わず・・・









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