神に最も近い男と神のいたずらで生まれ残った男

「シャカに関しては聖戦を勝利に導くために黄金全員があの矢に力を込めねば嘆きの壁はどうにもならなかったのでしょうし、アベルに関しては本来あるべき形としてオデッセウスがカインの治療をしたことを受け入れたということなのでしょう。そしてこうして幻想郷だからこそ得られた身体を前にしてもその身体に喜ぶことなく、死者として裁かれようとする考え方は悪くないものだと言えますが・・・必要なことだったからとは言え、貴殿方は割りきりが良すぎます。特にアベル、最後に貴方は自分の事を理解したからこそカインの為にもと涙をしたのでしょうが・・・だからこそ少しこの幻想郷で聖闘士としての使命であったりからはもう離れ、一個人として自分と向き合ってはいかがかと提案したいのです」
「一個人として、か・・・」
「・・・聞いてみればそこまで悪くない発案に思えます。それこそアベルは自身の生まれかたもあって悪に染まった人格だとのように振る舞ってはいましたが、永遠亭で過ごしている間の彼は悪であるならばこそ生にしがみつくと言ったような我を感じさせる事はありませんでした。むしろ自身がカインの重荷になっていたことを悔いるかのような事を言っていました・・・悪から生まれたというのに、まるで生まれ変わったかのように」
「生まれ変わった、か・・・正確に言えば治療されて消えると思ったからこそ、どうせ最後だからと開き直ったような物だったからな。そしてこのように人の形を成した上で時間もあって思い返すようになればなるほど、出てくるのは後悔の念ばかりだった・・・俺さえいなければカインは双子座の聖闘士として思い悩むことなく、一点の曇りもない正義の存在としていれたのではないかとな・・・」
「「「「・・・」」」」
そうして映姫の言葉から端を発してアベルについての話は続いていくのだが、当人が悲し気に目を伏せて握り拳を見るその様子に場にいる面々は何とも言いがたそうに沈黙するしかなかった。アベルから出てくる言葉の数々は正しく残悔の念に満ちていた為に。
「・・・貴方の本音を聞けたからこそ尚の事として言えるのは、そうしてしばらく自身と向き合ってみてはいかがかと私は勧めたいのです。そしてシャカ・・・貴方も彼と共に自身を見詰めた上で、彼を助けたり助けられたりといったようにしてほしいと思っています」
「・・・そのように考えられた上で気遣われる事に関しては感謝致しますが、具体的にはどれくらいほど我々に関してその時間を与えられるのですか?」
「そこに関しては度々私が様子を見に来るようにしますので、私がもういいだろうと判断するか貴殿方がもう満足だと心から思えたなら私の元に来るか待つなどしてその時に申し上げてください。先程の条件を守ってくれたならその時に涅槃に向かうための裁判を行い、貴殿方を送らせていただきます」
「・・・分かりました、そうすることに致しましょう」
その空気に凛とした声を上げて話をシャカにもお願いするといったようにしていき、具体的な条件を告げられた事によりシャカは頷いてそうすると返した。
「っ・・・」
「苦い顔をするのはお前の立場からしたなら当然だろうが、閻魔様の酌量により自分を見つめ直す機会を条件付きで与えられたんだ。そこからはみ出すような事はしないと言っておこう」
「っ・・・!」
ただ紫はその決定に反対したそうな空気を出してはいたが、アベルからの返しの言葉に一層苦いといった表情を浮かばせるしか出来なかった。映姫の性格を知っているからこそ弁論で覆させようとするのが難しいのもそうだが、だからと言って実力行使も二人の力を前にすればいかに紫でも難しいのはよく理解していたために。









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