神に最も近い男と神のいたずらで生まれ残った男

「そう責めてやるな。そいつは幻想郷の管理者として俺達を危険かどうかを見定めるのもそうだが、どういう裁定を下すのかを確認したくてずっと覗き見ていたんだろう。出来ることならとっとと涅槃に行けと願いながらな」
「ちょっ、ちょいと待ちなよ・・・ずっとってことは八雲紫が覗いてたことにあんたは気付いてたってのかい?」
「当然だ。お前達もサガの戦いを見ただろうが異次元空間を開くのは双子座の聖闘士の十八番だが、ただ異次元がそこにあるだけなら俺も何も感じはしない・・・だが見ているだけなどと言っても干渉をしてくるのであれば、俺からすれば分かりやすいことこの上無かった上で、シャカも何も言いはしなかったが八雲紫がいることに気付いてはいただろうがな」
「そ、そうなのかい・・・」
「っ・・・!」
だがそんな中でアベルが気持ちは分かると悪い笑みを浮かべつつ言う様子に小町がその話の中身につっこむが、当然とばかりに自分だけじゃなくシャカもとの返しに唖然とする中で紫はたまらないとばかりに苦い顔を浮かばせる・・・紫の境界を操る程度の能力による覗き見は勘の鋭さに定評のある霊夢でもハッキリ見られていると悟られた事はなかったのに、二人にはあっさり見破られていたのだという事実を前に。
「そう顔を歪めないでくれたまえ、八雲紫。我々は涅槃に向かう為にここに来たのだから、君の懸念は無くなるだろう」
「・・・いえ、死んだからこそここに来たという貴方には悪いとは思いますが・・・こちらとしては今すぐの貴殿方の裁判を行う事はありません。ですので涅槃に向かうのはしばらくお待ちください」
「っ!?」
シャカはその様子に大丈夫だろうというように漏らすが、まさかの映姫が首を横に振りながら出した答えに紫は信じられないというように目を見開いた。
「言いたいことは分かります、八雲紫。何故そんなことをという気持ちなのでしょうが、私の判断としては今すぐこの二人を裁く必要はないと見たからです・・・実際お二人は素知らぬ顔をして常世というか幻想郷にいようとしたならいれたにも限らず、それをしなかったのは自分達が死んでいるからこそ死者として裁きを受ける覚悟があったから迷わずここに来たのでしょう?」
「はい、その通りです」
「迷いなく答えていただけたことはありがたく思いますが、そんな気持ちを持つお二人だからこそ敢えて今すぐの裁判を行う必要はないと見たのです。死を受け入れる事に逃げも隠れもしないのなら、幽霊に亡霊の類いも普通に活動するこの幻想郷ならばしばしの時間を過ごしていただいても構わないのではないかと見たのです・・・無論、条件は付きますが」
「条件?」
その反応に当然と言いつつそう判断した理由を話していく映姫だが、そこで条件と出てきたことにシャカは問い返しの言葉を向ける。
「単純な話として貴殿方二人には人間側にも妖怪側にもどちらにも立たない中立な立場で過ごしていただきたいということです。ハッキリ言ってしまえば貴殿方の力はこの幻想郷においてもかなり強大と言わざるを得ませんから、妖怪側に付くのは有り得ないにしても人間側に付いて力を振るうのはこの幻想郷の在り方にも関わるので、どちらの立場にも立たないようにして妖怪退治なども貴殿方を無謀にも襲ってくるのは別にしても、頼まれても断るなどして積極的には行わないでいただきたいのです」
「・・・幻想郷のバランスを崩さないためにもそれくらいの条件は必要になると見てそう言ったんだろうが、それなら尚更に俺達をこのまま裁判にかけて涅槃に向かわせた方が手っ取り早い上で懸念せずに済むのではないのか?」
「確かにそうするのが早いというのは間違いではありません・・・ですがそうして身体を得られたからこそお二人、特にアベルに言えることとして今の自身が存在するということとしばらく向き合ってみるべきではないかと私は言いたいのです」
映姫はその条件を分かりやすく説明するがアベルはその中身を破られる危険性を考慮してまで何故そう言うのかと不可解そうに問い返してきたため、二人に考えてもらうためと返す。











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