最強を願われた零と詳細なく消えた科学者

「・・・ん、うぅ・・・こ、ここは・・・?」
「・・・気が付いたか、ゼロ?」
「・・・ケイン、博士・・・貴方は、ドップラーの施設での事故で死んだはずでは・・・?」
・・・そうしてしばらくの時間が経ち、ゼロの体の復元が済んでほぼ元通りになった頃。
意識を取り戻したゼロが知らない天井を見て困惑の声を漏らす中、少し頬のこけたケインが笑顔を浮かべて顔を覗きこんできたことに起き抜けの為にハッキリしない意識ながらもどうしてと問い掛ける。
「その辺りについてはこれから説明しよう・・・お前が眠ってから大分時間が経っているのでな」
ケインはそんな様子に前置きを置いて説明を始める。今までに何があったのかに、ゼロの出生の秘密に関してを・・・


















「・・・そんな・・・そんなことが・・・」
「残酷なように思えるだろうが真実だ。そして戦いが終わった後でXは無事に治り、わしもワイリー博士の望みによりお前を治したということだ」
「そんなこと、俺は望んではいなかった!むしろ話を聞いて何故死なせてくれなかったのかとすら思ったくらいだ!・・・そんな理由で俺が造られ、そして俺を元に戻すことも含めてコロニーが落とされたなどと聞いてのうのうと生きていい筈なんてない・・・!」
・・・そうしてゼロに全てを説明をし終わったケインだが、その中身に苦渋の表情を浮かべる・・・ゼロ自身自分でどういったルーツを辿って造られてきたか分からずに生きてきたが、まさかそんなことからだと思っていなかった上に自分を元に戻すためにかかった犠牲のあまりの大きさを考えれば当然だろう。
「・・・そう思うのはお前の立場に考え方からしたなら当然だろう。だがわしはワイリー博士にライト博士の気持ちもあるが、わしとしてもお前に生きていてほしいと思ったからこうしてお前を治したのだ。もうお前はワイリー博士の思うようなゼロに戻らないというように出来ると思ったのもあってな」
「・・・しかし・・・」
「それでも、と言いたいのだろう・・・だがお前がいなくなったことにより今後はXが中心となる形でイレギュラーハンターは動くことになり、シグマがいなくなってもまた誰かが現れかねない可能性がある。そういった時にお前の力が必要になるかもしれぬ事も有り得るかもしれぬから、無いなら無いで構わぬからお前を残しておきたいと思っている」
「・・・むぅ・・・」
対してケインは理解を示しつつも自身の気持ちもだが備えも欲しいというように言うと、ゼロも理解出来ない訳ではないために唸り声を漏らすが・・・ケインはそこで力のない、笑顔を浮かべた。
「・・・それにもう、わしの命は残り少ない・・・今お前が目覚めるとは思ってはいなかったが、そろそろわしはお前の治療をわしの人格を投影したレプリロイドに任せようとしていた所なのだ・・・もうわしでお前の治療をすることは厳しくなってきたのでな・・・」
「っ・・・ケイン博士・・・」
そうして出てきた言葉にゼロは動揺しつつも、改めてその姿を注視していく・・・頬のこけ方もそうだが、衣服に隠れた腕などもゼロの記憶にあるケインより痩せ細っていることを確認する形で。
「・・・ただこうして治療の中でゼロと話せるとは思っていなかったが、だからこそ年寄りの最期の頼みと思って・・・治療を受けて、いずれ目覚めが来るかどうかも分からないが眠りを受け入れてはくれぬか?ゼロよ・・・」
「・・・・・・分かりました・・・俺が目覚める時が来ないことを願いながら、その治療を受け入れます」
「済まんな、ゼロよ・・・」
そんなケインが願う声にゼロも葛藤をした上で受け入れると答え、ケインは笑顔で頷いた。力なくも嬉しそうな様子で・・・


















・・・そうしてゼロは再び眠りに落ち、ケインは自分の人格を投影したレプリロイド・・・適当な体が無かった為にワイリーの体だった物に後を任せ、ケイン本人は永遠の眠りについて自分の人格を投影したレプリロイドに地に埋葬された。

そうしてゼロの治療を進ませたケインは治療を終わらせ、ゼロもそうだが自身もカプセルの中に体を入れて二人は長い眠りについた。いつか訪れるかもしれないもしもに備える形で。

だがゼロもだがケインも目覚めることなく時間が進んでいき、X達も長い時間により活動を停止させていくと共にゼロ達の存在は忘れられていくことになっていき・・・数百年後に秘密の研究所が見付かることになったが、二人の体が納められたカプセルは見付かることはなかった・・・まるでそこには最初から何事も無かったかのように・・・










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