最強を願われた零と詳細なく消えた科学者

「後でゼロが聞けばそんな必要はなかったと言うでしょう・・・ですがワイリー博士の最期の言葉を聞いたことからどうしてもゼロをこのまま死なせたいとも思えなかった事や、もうワイリー博士やシグマのような存在が現れぬならゼロを治していいのではと思えたのです。そして遠い未来に訪れるかは分からなくとも、そのようにライト博士が処置を施したのなら誰かが覚えていなくてもゼロが目覚める時があっても良いのではないかと・・・」
『成程、未来にゼロが目覚めるならそれもいいのではとケイン博士は思ったというわけか』
「そうなります。幸いになのかワイリー博士の執念からなのかゼロのデータに関しては無傷で残っていましたから、これでわしでもゼロを本来の全力が出せる状態で治すことが可能という見通しも立っています。ドップラーの研究結果もあって、元の破壊衝動を持たないゼロのままです」
『そこまで出来るだけの見通しもあるということか・・・』
そうしていかに自分が考えてゼロについての可能性を見出だしたのかを話していくケインに、ライトもしみじみとその言葉を受け止めるがそこでケインが寂しそうな表情を浮かべた。
「・・・ただ、おそらくもうこれで貴方と会うことは無くなるでしょう。貴方はワイリー博士を止める為にわしに協力を願い出てそれが叶ったことからわしと共にいる理由が無くなり、その上でわしもゼロを治すことで時間が取れなくなるのと共に後どれだけ生きられるか分かりませんので・・・」
『・・・体の具合は良くないのか?』
「今はまだいいでしょうが、そう長くはないでしょう。わしも歳ですし、シグマの最初の反乱から色々とありすぎた・・・正直、ゼロの治療は貴方と同じようにわしの人格を投影したレプリロイドに任せることになるかと思われます」
『そうか・・・』
そんなケインから出てきたのは近い内での自身の死を覚悟したといった言葉であり、ライトはそれらを受け止める・・・ケインは元々老齢であったことに加えて自身の造ったシグマの反乱に立て続けに関わってきた上で、ドップラーというレプリロイドながらも友と呼べる存在を失うことになった・・・そう考えれば心身ともに疲弊して限界だと判断するのも無理はない上に、やはり元々の年齢からしても長く生きることは難しいと見るのが普通であった。
「ですのでもう貴方はわしやゼロの事は気にせず、何か起きた場合にXを見守るようにしてください。これからの地球にはまだXが必要ですし、シグマもワイリー博士もいなくなったとは言えまた何かが起きたなら貴方のサポートがXには必要になると思いますので・・・」
『・・・私も手伝える事があると思うが・・・』
「いえ・・・遅かれ早かれわしはもう死にます。その時になって貴方にわしの死に様を見せたくはありませんので・・・」
『・・・分かった。ではこの研究所はそのまま使ってくれ。この研究所は簡単には見付かることはないし、ゼロの修復を他の場所でとなると見付かった時に面倒になるだろう。だから気兼ねせずにここを使ってくれ・・・最期の時を過ごす形で』
「ありがとうございます、ライト博士」
だからこそケインが一人でこのまま残りの時間をゼロの修復にかける形で生きていくと述べたことに、ライトもそれ以上は追求せずにここを使うようにと言った。せめて協力してくれたケインに自分が出来ることは、所有していた研究所を墓を兼任する形で渡すくらいしかないと・・・




















・・・そうしてケインの元をライトは別れを告げた後に離れていき、ケインはゼロの修復に取り掛かっていった。自身の体と向き合いつつ残りの時間をゼロの為に使う形で。









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