最強を願われた零と詳細なく消えた科学者

『・・・シグマに関しては不幸な事故のようなものだったのだろうが、だからこそお前はシグマに協力という形で利用してきたというわけか。カウンターハンターの時もそうだが、ドップラーの時とレプリフォースの時と来て今回も・・・』
「フン、その通りだ・・・ゼロを元に戻すのが目的にしつつも最早あぁなったシグマは第二のわしと言ってもいい存在だからな・・・故にこそ奴のボディを用意したが、またもやXにしてやられたというわけだ・・・ゼロが邪魔さえしなければXを殺すことが出来たものを・・・!」
そんなケインからシグマについてを深く掘り下げていくライトに、ワイリーは徐々に憎悪を募らせた声を上げていく。自分の目論見を邪魔したXにもだが、目の前のライトに対して向ける形で。
『・・・ワイリーよ。お前はゼロが最強だと示したいと言った上でXを庇ったことに恨み言を言ったが、私から言わせればゼロの方がXより強かったからこそあの結果になったんだ』
「何・・・?」
だがライトが口にした意外な言葉に、ワイリーは呆けた声を漏らした。Xよりゼロが強いと認めるという、まさかのライトからの言葉に。
『信じられないと言った様子だが、あの二人は相討ち同然の形で完全にどちらも倒れこんでいて先に気を取り戻したのはゼロだ。どちらかが先に立ち上がれば勝ちという方式だったなら間違いなくゼロの勝ちであった』
「戯言を!わしが求めていたのはあのような結果ではない!ゼロがXを破壊してこその勝利だ!それを折角元のゼロに戻したというのに、Xなどを助ける為になどで動きおって・・・!」
『その気持ちがあったからこそ、ゼロはXよりも早く立ち上がれたということに目を向けるのだワイリー。むしろシグマがいなくてあの時のままのゼロだったなら、ゼロはXより早く立ち上がれていなかっただろう』
「何・・・?」
そう思った理由を語るライトにすかさずワイリーは理由ではないと返すが、そうではないとその気持ちが重要だと告げると訝しげな声を漏らす。
『今気を取り戻したのはゼロが先だとは言ったが、あの時の二人はとても簡単に立ち上がれるようなダメージではなくしばらくの時間を修復の為の休憩にあてなければならなかったのは分かった。その上でお前の言うように元に戻ったゼロではXを倒すという気持ちだけで起き上がるというより、捨て身になることは出来なかっただろう。あの場面では命を賭けねば起き上がる事は出来なかっただろうからだが、だからこそXを助けるためという気持ちがあったにしても気を取り戻したのが先であったゼロの方があの戦いの勝者であった・・・ということだ』
「・・・つまり貴様はあの時、シグマが攻撃を仕掛けていなければゼロはXより上という結果になっていたと言いたいのか?」
『そうだ。と言っても最早過去を変えることなど出来る筈もなく、Xはおろかゼロにシグマと三人とも似たような事になってしまうという結末になったというわけだが・・・正直、私は本当の意味で力を発揮したゼロの能力に関して甘く見ていたと言わざるを得なかった。むしろよく相討ちにまで辿り着けたとすら思うくらいにゼロの能力はXより高いと私は見た・・・そして先に起き上がり、Xを助けたあの姿を見たからこそ私としては他者を思う心を手に入れたゼロの方が強いと確信したわけだ。ただただその力を持って破壊を続けるだけのゼロより、何かの為に動けるゼロとなれたならXよりゼロの方が能力としても強いと』
「っ!」
・・・そうしてライトが続けていった言葉を聞くワイリーだが、その中身に衝撃を受けて目を見開くしかなかった。ワイリーは人格を投影したデータだとは言っても本人同然と言っても差し支えない存在なのだが、それでもライトの口からゼロの方が上だと認められる言葉などワイリーとしては聞けると思っていなかった為に。









.
6/19ページ
スキ