弾かれた者、時間の流れから消えた者

「・・・ジャキがラヴォスを倒すことを願い、そしてサラを助け出したいと思っていたのは確かでしょう。ですが八雲紫の話からそうしてサラが救われた世界があるというのもそうですが、もし仮にサラを自分の手で救い出せたとして・・・ジャキは元の素直な子どもになど成長したのもあって戻れなかったでしょうし、以降にどう生きるのかという事もラヴォスを倒してゲートの前で別れた時のようになるのは目に見えています。むしろサラを助けるという目的を果たしたならばこそ、ジャキは一層に自分がどうしていいか分からずにいたことでしょう・・・人生の大半を捧げたラヴォスに対する復讐の精算を遂げた事で、どう生きればいいのかというよう」
『・・・確かにそう考えると、ジャキさんは一人で何処かに消えてしまいそうですね・・・もう自分には思うところはないと・・・』
「えぇ、私もそう思うわ。けれど現実としてはジャキはあのようになってしまい、クロノ達も話のようになってセルジュという少年を始めとした者達でなければサラは呪縛から解き放たれる事もなかった・・・ジャキの記憶が戻ったなら自分でどうにかと言いたいというのは予想はつきますが、もうそんなことは色々な意味で無理だというのは八雲紫の話から分かりました・・・だからこそジャキには今までの分を取り戻してもらう形で、記憶など戻らないままに家族の愛を受けて生きる必要があると思うんです。いえ、正確には私がそうしたいんです・・・もう茨の道を突き進んで孤独に、そして自分自身も含む形で不幸になるのならいっそ記憶など戻らないままに生きて、何も知らないままに穏やかに過ごしてほしいと・・・」
『・・・何も知らないままに、ですか・・・そうですね・・・元の魔王さんに戻ってしまえば例え話を聞いて納得はしても、ジャキさんは最低でも地霊殿を離れてしまうでしょうからね・・・そう考えれば記憶を取り戻すよりは、そうならない方が穏やかに過ごせると私も思います』
「理解していただけた事は嬉しくは思いますが・・・仲間としてそれは止めたいといった考えにはならないんですか?貴方の心は私には読めませんが、貴方なら私の気持ちや考えに反対する可能性もあるのではと考えていたのですが・・・」
さとりはいかにジャキの事を考え、記憶がない方がいいと思った上で受け入れ続けるつもりでいるのか・・・それらを聞いてロボも重くも納得するが、さとりは反対の様子が見えないことが不思議だというように問いを向ける。
『・・・確かにジャキさんに元に戻ってほしいという気持ちはありますが、紫さんの話から私やジャキさんがこの幻想郷から出るだけでもどのような影響が出るか分からないというように言われた為、私は記憶が戻って外に出ると言うのであればジャキさんを止めるつもりでいました。ですが私が止めると言ってもジャキさんは私を殺してでも外に出ると言ったでしょうし、何よりゼロではないとは言ってもジャキさんが勝てる可能性という物は話に聞く限りではほぼないに等しいでしょう・・・そう考えればいっそ記憶が戻らない方がいいと判断した上で、さとりさんが本当にジャキさんのことを想っていると思えたからこそ任せていいと思ったんです。魔王さんとしてを重ねかねない私よりはそうした方がいいのではと』
「・・・私を信用してくれるんですか?貴方は・・・」
『覚り妖怪がどういう存在なのかに地底でどう思われているかについては聞き及んでいますが、先程のこいしさん達との姿を見て私は貴女にジャキさんを任せられると思いました。ですからさとりさん・・・ジャキさんをよろしくお願いします。私は貴女達を信じます』
「っ・・・心を読めないというのがもどかしいと共に、信用してくれているというのが分かるというのは何とも言えない気持ちになりますねこれは・・・」
ロボもまたそこで自分の考えからの気持ちを話していく中でさとりが自分を信じるのかと問い掛けるが、真っ直ぐ迷いのない答えを返してくる様子に恥ずかしそうに目を伏せながら言葉を漏らす。ロボの言葉に嘘がないと分かるが故にと。









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