弾かれた者、時間の流れから消えた者

「えぇ。ですが結果は貴方達の方が良く分かっているように、女王はラヴォスにより狂うことになりジャキもサラも人生が狂ってしまう事になった・・・そう考えればサラがあぁなったことを責めることは出来ませんし、もし責めるというか彼女の為にと八雲紫の言うよう殺すことが救いと見てそう出来る機会を与えられたとしても、私では夢喰いやラヴォスには絶対に敵わないでしょう」
『・・・そうなんですか?』
「ロボさんは私がどれだけの強さなのかは分からないかと思いますが、心を読める以外の実力に関して私はスペルカードルールでならまだしも腕力だけで言うなら人間と比べても非力な部類に入ります。そして肉体的な耐久力は多少マシと言えるくらいで、貴方達のようにラヴォスの攻撃に何発も耐えられるとも言えません・・・正直、避ける余地のない苛烈な攻撃を仕掛けてくるラヴォスに夢喰い相手では、心を読めて能力をフルに活用したとしても私はどう頑張った所で無惨に殺される以外に無いでしょうね」
『・・・貴女はそう見ているのですか・・・』
その上でラヴォスにいかに女王達一家が人生が狂ったのかに、自分がラヴォス達に勝てるか・・・それらを語っていくさとりだが、自らの非力さを自身で明かす中身に何とも言いがたそうな声を漏らす。
「私の実力は私自身でよく理解していますからね・・・だからというだけではないですが、私はサラの事を責めるつもりはありませんし恨み辛みを言うつもりもありません。ただジャキに関してはサラはどう思うかは分かりませんが、このままこの地霊殿で引き受けます。私達の家族として」
『・・・いいんですか?』
「いいも何もさっきの貴方も見たと思いますが、もうジャキはこの地霊殿に馴染む形で暮らしています。お燐もですが、お空もこいしもジャキを受け入れる形でです・・・これが魔王と名乗っていた時のジャキなら無理だったかもしれませんが、あの子が完全に幼子同様の精神状態だったが為にお空もこいしも年上として庇護欲を抱いたからかよくジャキに構っています。むしろここでジャキが離れるとなったらあの二人は相当に文句を言うでしょうね」
『それほどにお二人もジャキさんを気にかけているのは分かりますが・・・前に千切れた紙のようになっているとさとりさんは言いましたが、元の魔王さんとしての記憶に自我は少しずつでも戻る可能性は無いんですか?もしその場合は・・・』
「その可能性は時間が経てば経つほど無くなっていくと思われます」
『え・・・?』
そんな反応に苦笑気味にさとりは自分達が引き受けると言い、ロボが記憶が戻る可能性を危惧するように言葉にするが断定するよう首を横に振る姿に困惑する。
「その理由はそう難しい話ではありません。私が千切れた紙と評したのは確かで、今のジャキはここに来てから自我に記憶が芽生えて作られて始めていますが、それらは言わば地面に根を張り出した植物のような物になります・・・ですが元の記憶はそんな根を張る植物のようなものではなく、例えに出したような千切れた紙のような物でちょっと風が吹けば空に飛んで散らばるような物ですが・・・今のジャキはその記憶を散らばらないように手元にまとめることも、留めおこうと思えるだけの余裕などないのです」
『・・・つまりジャキさんは自分で記憶を手放したいと思って手放す訳ではなく、記憶を失っていったとしてもそれをもう大事な物だと認識出来ずに失っていくだけだということですか・・・』
「そう。今のジャキは芽生え出した自我に頼るのが精一杯で、その記憶はもう忘れる以外にないと見ているのだけれど・・・忘れてしまった方がもういいんじゃないかと思うの。魔王としてはもう忘れてジャキに戻る形でね・・・」
その理由を例えも交えて話すさとりにロボはそういうことかと納得するのだが、複雑そうな表情を浮かべつつ自身の気持ちを明かす。記憶が戻ることをさとりは望んでいないと言うよう。









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