弾かれた者、時間の流れから消えた者

「・・・多分魔王のままだったら、今の自分の事なんか認められないって思いはするだろうとは思う。けどそれで思い出せないんならそれでいいって思うべきなんじゃないかな・・・」
「ルーク・・・」
そんな中でルークが複雑な様子を見せながら口にした言葉に、さとりはその様子に複雑さを滲ませる。
「記憶って物が戻る事が絶対にいいことになるかどうかって言われると、俺にはそれが正解かどうかっていうのは分からないしそもそも記憶が戻るかどうかも分からない・・・だから重要なのはこれからを魔王としてじゃなく、ジャキとして見て接することが大事なんじゃないかって思うんだ。じゃないとかつての魔王を求められたら、ジャキが辛いだけになると思う・・・」
「「「「っ・・・」」」」
その上でルークが続けた実感が多大にこもった言葉を受け、ロボと早苗以外の面々がそっと息を呑んだ・・・言ってしまえば今のルークの話は自身の体験を投影したようなものであると、その過去についてを知っているからこそ理解してしまった為に。
「・・・だからロボとしちゃ辛いかもしれないけど、ゆっくりとジャキについてを見守った方が俺はいいと思うんだ。紫達がジャキの事を危惧するのは分かるけど、話に聞くと本当に今のジャキは自分の名前が分かるかどうかくらいで自我の確立すら危ういんだから、魔王に戻るのかジャキのままで生きるのかどうかを判断する為にも時間をかけてさ」
『・・・そうですね。急いでしまっては魔王さんの負担になるでしょうから、そうした方がいいでしょうね』
故にこそゆっくりさせるべきと投げ掛けるルークの言葉に、ロボもその言葉に込められた想いを受け止めて頷いた。魔王に無理をさせないと。






・・・それでそんなルークの言葉からもうさとりに後を任せた方がいいという雰囲気になり、後は各々帰ろうかという流れになった時に紫がジャキにかけた術を解くと・・・その後すぐにジャキはそっと目を開けた。
「・・・ねえ、さん?」
「あら、起きたのジャキ?」
「うん・・・この人達、誰?」
そこで目をこすりながら起き上がるジャキがさとりに話し掛けた後、回りを見渡しながら漏らした声にロボが一歩前に出る。
『・・・こんにちわ、私はロボです。ジャキさんと呼んでいいですか?』
「・・・いいけど、何だろう・・・何か、懐かしい感じがする・・・」
『懐かしい、ですか・・・嬉しいですね、そう聞くと』
ロボは軽く頭を下げ自己紹介をするとジャキが自分でも不思議だというように懐かしいと口にしたことに、本当に嬉しさを滲ませているような声を漏らす。
『・・・すみません、もう私は戻らなければなりませんが・・・またここに来たら、会ってくれますか?』
「・・・別にいいよ」
『ありがとうございます、ジャキさん』
ただもう帰らなければと口にしつつロボが再開の約束をしてくれるかと言うと、どこかひねた様子ながらも嬉しそうなジャキの返しにロボもまた嬉しそうに返した。


















・・・そうして一同は地霊殿を後にして、小町の能力で守矢神社へと向かった。



「さて・・・私は守矢神社の二人に早苗への注意やらを含めて話していきます。もしここでルークだけが白玉楼に帰るというのであれば、彼の安全の為にも小町に送らせますが・・・」
「いえ、この後私も白玉楼に行きますので共にスキマで向かいますが・・・その前にロボ、貴方に確認しておきたいことがあります」
『・・・私に、ですか?』
それで守矢神社の前に辿り着いた所で映姫が紫にどうするか話し掛けると、問題ないと言いつつロボへと話し掛ける。









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