弾かれた者、時間の流れから消えた者

「・・・すみません。ジャキは私が責任を持ってこの地霊殿で引き取ります」
「・・・え?」
だが次の瞬間にさとりが放った言葉に誰とも知らぬが、呆けた声が辺りに響いた。自分が引き受けるとの言葉に。
「映姫様やルーク以外の他の皆さんが危惧されている事はその心から分かります。もしかしたならジャキは記憶を取り戻して、魔王としてまた夢喰い・・・姉であるサラを倒すために何かを仕出かすのではないかと考える可能性があるから、ここで葬る事が最善なのではないかということは。ですが先に話をしたようジャキの心は数多に引きちぎられた紙のような物で、ジグソーパズルのようにピタリとくっつくような物とはなり得ません」
「・・・それで安心だから貴女がこの地霊殿で引き受けるというのですか?庇い立てるような形をわざわざ取って・・・」
「庇い立てるですか・・・はい、認めます。私はジャキを、この子を見捨てたくないという気持ちからそう申し上げました」
さとりはそのまま魔王が大丈夫だという根拠を話していくが、映姫から情があるからなのではというような追求がかかったことに肯定だと頷き返した。
「確かにこの子が魔王として活動し、ラヴォスへの復讐の為に動いて様々な者達に被害を与えたことは事実でしょう。ですがほんの僅かな時間であるとはいえ、ここで話をしたこの子は無垢で私を本当に姉として慕ってくれました・・・そんなこの子を見捨てて殺すようなことなど出来ないと思ったから、私が引き受けたいと申し上げたのです」
「さとり・・・あんたの言うことは間違ってないんでしょうけど、もしこいつが記憶を取り戻して自分の為にって幻想郷だったりを脅かしかねないことをしたらどうするつもりでいるの?」
「・・・その時は私がジャキを止めます。姉として、弟としてこの子を・・・」
それで情が芽生えたからこその話をしていく中で霊夢が向ける確認に、さとりが真っ直ぐ迷いを見せずに返していく様子に肩を竦めて背を向けた。
「・・・どうやら私の出る幕は無さそうだから、もう帰るわ。後は勝手にしてちょうだい」
「あっ、霊夢さん・・・」
「・・・あぁして霊夢が帰ると言うことは、この件は大丈夫と見たということかしら・・・」
それで言いたいことを言って一人歩いていく霊夢に早苗が手を出すが、紫はその行動に霊夢がもう問題ないと見たのだろうと漏らす。
「・・・分かりました。一先ず魔王についての身柄は貴女に任せることにしますが、もし記憶が戻ったり何か行動を起こしそうだというならすぐに対処もそうですし、私に報告をお願いします」
「はい、その時は」
映姫もその仕方無いとその言葉に頷くことにすると条件を述べた上で伝え、さとりはすぐに頷き返す。
『・・・あの、魔王さんは大丈夫なのですか?早苗にはここに来る前に幻想郷でも指折りに危険な場所であり、人喰い妖怪がいっぱいいるという話を聞いたのですが・・・』
「そこの所は私に任せてください。しばらくは地霊殿でジャキには大人しくしてもらうように言いますし、外に出る場合も私が付き合うだったりお燐などに頼みますから」
『そうですか・・・私としては魔王さんに元に戻ってもらいたいのですが、そうなると夢喰い関連で動きかねない・・・そう考えるとどうなると魔王さんにとって一番いいんでしょうか・・・また辛い困難な道を歩むことを選ぶだろう記憶が戻るのがいいのか、サラさんや私達のことを始めとしての色々な辛い事も含めての記憶を思い出さない方がいいのか・・・』
「・・・それは・・・」
ただロボが心配そうな声を漏らす様子にさとりが大丈夫と返す中身に納得しつつも、魔王の状態に関しての疑問の声を出すと他の面々も答えにくそうに表情を浮かばせた。ロボ自身の気持ちとしても仲間に対する感情の複雑さが見える様子に。









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