焔の危機にいかに動いていくか

「元々この幻想郷を作ったのは失われし者達の楽園というのがコンセプトの一つにあるわ。そして紅魔館の連中が入る前から元々いた幻想郷の有力者達の中には敢えて幻想郷のパワーバランスを変えるようなことをする存在は今のところいないけれど、今後そういった有力者が出てこないとも限らない上にそうなってしまえば幻想郷自体が崩壊しかねない可能性も出てくる・・・けれどかといってそれならそういった者達を全て排除すればいいといった考えになるような風潮が出来ることは避けたいの。色々と理由はあるけれど幻想郷は外の世界があってこそ成り立っている部分があるから、幻想入りしたモノや決起した者達を全て排除なんてしていたら幻想郷の衰退に繋がりかねない流れになり得ることや、外の世界では文明や科学が発達していることによって怪異などが存在しきれず幻想郷に流れ着かざるを得ないモノも出てくる・・・それらを考えればスペルカードルールをこの幻想郷での戦い方の基本とした方がいいと見たのよ。ルールに従った上で事を為そうとするなら殺しあうまでにはいかない戦いの形とすることで、その後負けても幻想郷で普通に暮らせるように出来るようにとね」
「・・・それで、そのルールに従わないような相手は・・・といった所かしら?」
「・・・その時はその時、ということね」
「っ・・・」
続けていかに考えたからスペルカードルールを定めると決めたのか・・・そう話す紫に幽々子はそこで話されなかった部分を意味深な笑顔を浮かべて問い掛けると、同じように意味深な笑顔を浮かべて返す様子に妖夢はそっと息を呑んだ。明らかにその言葉にされなかった中身に不穏な響きを感じて。
「・・・まぁそういった諸々の事情から、今後の幻想郷の事を考えてスペルカードルールの制定をすることにしたのよ。ただこうするからはいそうしますなんてすんなりいかない者達ばかりだというのは知っているから、これからしばらくは説明回りに時間を使うからちょっとここには来れないわ」
「それは仕方無いとは思うけれど、スペルカードルールでの戦いを基本にするにしても、それを無視して殺しにかかるような者についてはどうするのかしら?」
「その辺りは各々の判断に任せる事になるわね。というより人里を襲ってはいけないというルールすら守れない妖怪のような存在がスペルカードルールを律儀に守れる訳ないでしょうから、そういった相手なら普通に退治して構わないわ」
「そう。それを聞けて安心したわ」
そんな含みを持ったやり取りは続いていき、そろそろ行くといったように切り出す紫に幽々子が確認を取るとその答えの中身に笑みを深めながら声を上げた。安心という言葉を使う形で。






・・・それで紫がスキマを使って帰っていったのを見て、ルークが幽々子の方に顔を向ける。
「・・・さっきのあれって、俺が襲われた時の事についてを聞いてくれたんだよな?」
「あら、そう思ったの?」
「分かるって。あれってスペルカードルールっていうか弾幕が張れない俺が襲われた時の予防線を紫に対して張ろうとしてたってことはな」
「フフ、そこまで読めてるのね。さとりと交流して覚り妖怪になろうというのかしら?」
「そんなんじゃないって・・・全部が全部分かるとかって言うつもりなんてないけど、何となく幽々子がどういうつもりでこう言ったなっていうのはある程度分かるようになってきたんだ。まぁ絶対にそうだって言える自信は無いけどな」
「いえ、確かに合っていたしそういったように分かってくれるのは嬉しいわ・・・貴方との繋がりが強くなったと思えるのだから・・・」
「幽々子・・・」
そうして発言の意図についてを聞いた流れから話は続いていき、ルークと幽々子が熱い視線を交わしあう様子に妖夢は少し恥ずかしげに視線を反らした・・・二人が一糸まとわず絡み合う姿は見たことはあるが、妖夢は年月が経ってもそういった面ではまだまだウブであった為に。









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