焔の存在を幻想にさせぬ為に

「言ってみれば、ティアの行動原理は誰かがいなければそれが成立しないということだ。かつてルークに対して自分の意志がないだとか操り人形のようみたいなことを口にしていたが、結局はティア自身も最初の一度ヴァンを襲った後はヴァンを完全に敵視しきれないままに終わってしまった・・・確かに肉親が相手なら戸惑い、躊躇う気持ちがあるのも頷けない話ではない。だがそれで優しさを見せられれば決めたことをあっさりと動揺に揺らし、その優しさが嘘であれば自分の体面を気にしながらも行動を起こさないということにしたティアの姿は本人が聞けば確実に怒るだろうが・・・ルークよりタチの悪い行動でしかなかった。自分の思いや考えから目を背け、自分は悪くないという態度を取り、何も知らないままにいたルークへと全ての責任を押し付けた事は。ただ・・・これは俺達にも言えることではあるがな・・・」
「そうですね・・・目を反らしたくなる事実ですが、私達の罪でもあると言うのにその事を私達は考えずにただルークを責めていましたからね・・・」
そんなティアについてを話す中身からルークへの後悔の念を顔に滲ませるアッシュに、ジェイドもまた表情を苦い物へと変える。






・・・そもそもこの場に何故アッシュとジェイドの二人しかいないのかと言えば、ルークへの想いが近いのが互いしかいないとかつての仲間達の集まりで感じたからだ。

アッシュはルークと一つになったことでルークの全てを受け入れ自分の意地から始まった独り善がりの行動を後悔し、ジェイドは理屈ではルークの事を歴史の陰に葬ることを選択したが本音の部分ではそう判断した時の事を覚えていた。苦渋に満ちていて、ルークがいるなら謝りたいと思えるほどの申し訳無いという気持ちに満ちていたことを。

だがかつての仲間達は違う・・・全く同じ人などいない事など今のアッシュも分かってはあるが、それでもルークに対する想いの在り方が違う様子を会う度に感じてしまえば進んで会おうとあう気持ちになれなかった。

・・・確かにルークの事を忘れられないのは一緒であるとは言える。だが苦渋を持って割り切る二人と、割り切れないというかどこかズレのある仲間達の姿にもう用事がないなら会わなくてもいいだろうという結論に二人は至っていた。同じような気持ちを抱く互いが相手ならまだ会ってもいいだろうということで、時折二人だけでこうして秘密の会合を開いてきた。と言ってももうジェイド自身が言っていたが、今回がおそらく最後になるだろうが・・・






「お話中に失礼しますわ」
「「!?」」
・・・重い空気が二人の間に漂う中、唐突に第三者の声がかかってきたことに二人は驚愕しつつ声の方に顔を向ける。そこには先程までは何事もなかった筈の空間がいきなり裂け目が入ったように広がり、その中から特徴的な帽子を被った金髪の女が上半身だけ姿を現していた。
「こんにちは、お二人とも。私の名前は八雲紫。紫の方が名前ですので、そちらでお呼びください」
「「っ・・・!」」
そんな女が微笑みながら自己紹介をするのだが、美しさ以上に際立つ底知れない雰囲気に二人は警戒するように身を引く。紫と名乗ったその美女に対し。
「あらあら、そんなに引かないでもらいたいですわ。こうして貴殿方の前に来たのは貴殿方に協力していただくためで、危害を加えようというつもりはありませんの」
「協力、だと・・・?」
そのまま扇子を取り出し口元を覆うように隠し、協力が欲しいと切り出す紫にアッシュは怪訝そうに眉を寄せる。









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