焔に触れ亡霊の姫は変わりゆく

「彼女にそういった面があることは私も少々意外ではあったけれど、そんな幽々子の状態を考えれば言葉で納得させるのはまず無理であろうし、実力行使に踏み切ったならそれこそ殺しあいの未来しか見えない・・・だから古明地さとりは映姫様にルークをそういった覚悟をしてでも引き取る理由が無ければ、白玉楼預かりの監視下に入れるという名目にしてはいかがかと言って、配下の死神に私もどうするか話し合った上でそうした方がいいと言うとそうするようにすると言ったのよ。彼女としてはかなり不本意な形の結論を出してしまったと苦い顔をしていたけれどね」
「・・・映姫様の性格を考えるならちゃんと自分が納得出来る形でどうするかを決めたかったんでしょうが、やはり幽々子様とそうなってまでもというのが気掛かりだったんでしょうか・・・?」
「そういった認識で間違いないでしょう。この白玉楼の主は幽々子であり替えの利く存在ではないし、本気で殺しにかかりにくる幽々子を相手にしたいとは映姫様も思わないでしょうから、本当にやむを得ず妥協するしかなかったと思われるわ」
「流石に映姫様でも、といった所だったんですか・・・」
そして最後とばかりにどういう風に話がまとまったかに映姫の不本意さを語る紫に、妖夢もその中身に理解したというように漏らす。
「あっ・・・ちなみに紫様に小町さんはどういうように映姫様に言ったのですか?古明地さとりと同じように言ったんですか?」
「死神の方に関しては古明地さとりの方に完全に寄った発言をしていたわ。彼女は心情的にルークに同情した部分もあったと口にした上で、幽々子との敵対は余程でなければしない方がいいとも映姫様に話し掛けていたわ。私に関しては・・・しばらく定期的に幽々子とルークの様子を見て報告をすると言っただけよ」
「えっ・・・どういうことですか?」
すると妖夢はふと二人はどういった風に話したのかと聞くと、小町の後に自身の行動についてを語る紫に眉を寄せる。
「・・・貴女が生まれる前から私は幽々子との付き合いがあるわ。そんな幽々子と会う時はあの子はいつも変わらない姿を見せてくれていたのだけれど・・・貴女も感じているのではないかしら?ルークが来てから幽々子が著しく変わっているということは」
「それは・・・確かにそうですね・・・長い間私も幽々子様にお仕えしていますが、あのようなお姿は初めてです・・・」
「えぇ、事実私も初めて見たわ。幽々子はあれでいて他者に対して淡白な所があるけれど、そんなあの子があそこまでルークに執心になるとは思わなかった・・・だからこそ幽々子の元にずっとルークがいていいのか分からないからと、二人の様子を定期的に見ると映姫様に言ったのよ。私としても彼がどのような影響を幽々子にもたらすのかが分からないからこそ、そうするとね」
「そう言われるということは・・・紫様はルークが幽々子様にとって、害になるのではと懸念されているのですか?」
「害という可能性も無いとは言えないわ。正しく言うならば未知だからこそどうなるか見ていこうと思ったのよ・・・現に今の幽々子はこのようになっているわ」
紫はそこから幽々子に対する気持ちや考えを複雑だというように明かしていき、妖夢がルークの事を害と見るのかと確認すると紫は扇子を取り出し自身の横に振ってスキマを開くと・・・



「ねんね~よ、ころ~り~よ~・・・」



「なっ!?」
・・・そのスキマの中に見えた光景は布団の中で眠るルークの横に同じように布団に入り、慈しむような表情を浮かべながら子守唄を歌いながらルークの胸元の布団をポンポンと叩く幽々子であり・・・妖夢はそんな光景に驚愕の声を上げるしかなかった。想像だにしていなかった物が現れたことに。









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