焔に触れ亡霊の姫は変わりゆく
「それで彼女に今日留まってもらったのはルークが寝ている所の様子を見てもらおうと思ってだったのだけれど・・・」
「・・・お察しの通りルークは自分の記憶に苛まれていますが、そこに加えて言うなら最後のエルドラントという地に向かった時には、もう自分が消えて死んでいなくなるということを覚悟していたから気を落ち着けていたのは見えました。ですがこうしてこの白玉楼に生者としてなのか死者なのかは分からなくとも、生きているのと遜色ないような暮らしをしていることがこれでいいのか・・・といった葛藤に繋がっているんです。生きているか死んでいるか分からなくとも、他の人達がこういった風に暮らせるようにだとか自分がこうしていていいのかと・・・」
「そんな・・・」
だからさとりに来てもらったと視線を幽々子は向けるのだが、苦々しくも語っていくその話の中身に妖夢は胸が痛むというように手を当て表情を歪める。
「・・・一応、今貴女が何を考えているかは私には分かります。ただそれを踏まえた上でもし彼が生者であり映姫様からここにいることが望ましくないからと引き剥がされることになったなら、私が彼を引き取りましょう」
「えっ・・・地底に連れていくというんですか、人間を・・・!?」
そこでさとりが前置きをした上で出した言葉に、幽々子ではなく妖夢が驚きに目を丸くする・・・さとりの済む地霊殿のある地底は地上にいることが望ましくないからと追いやられた厄介な妖怪達の住みかであり、人間が住むなど言えるような土地ではないどころか数時間もあれば食われてしまうだろう幻想郷屈指の危険地帯であることは知っているために。
「勿論彼の安全に配慮した上で地霊殿で暮らせるようにしますが・・・それだけ私も彼の事を哀れんでです。世界が違うからに技術の違いがあるからとは言え、覚り妖怪としてあのような心を持つ存在になど出会ったことなどありませんから・・・」
「・・・だから、もしもの時はそうするつもりでいると?」
「はい、彼がここにいるべき存在ではないとなったなら私の責任を持ってそうします。彼の事をこれ以上否定されるというのはあまり考えたくはありませんし、私も出来る限りは彼のメンタルのケアに務めたいと思います」
ただそれでもさとりが良心を持ってもしもの場合に行動を起こすつもりだと宣言したことに、妖夢がその言葉を神妙に受け入れる中で幽々子が口を開く。
「そうね。もしもの場合はそうするよう頼むわ。もしもの場合は・・・ね」
「・・・えぇ、そうなった場合はそうさせていただきます」
対して幽々子も言葉だけ聞くならさもそれでいいと言ったように返し、さとりはそっと頭を下げる・・・だが妖夢はその光景に寒さに身を震わせるように体を震わせてしまった。幽々子との付き合いの時間は長いし言葉面だけ見るなら穏やかに理解しているように振る舞っているが、妖夢から見たなら彼女の様子はそんなことになってほしくないししたくない・・・そう無言の圧力が込められているよう、その目に言葉が暗に言っているように感じられたことに・・・
・・・それで翌日になり、さとりは小町の迎えにより白玉楼を後にしていった。その上でルークは一週間という時間を白玉楼でゆっくりと穏やかに過ごしていった。妖夢との剣術稽古以外にも幻想郷の事だったり、様々な事を幽々子から教えてもらったりなどの時間も増やす形でだ。
そしてそんな時間を過ごす中での幽々子の表情は、妖夢から見て裏も何もないただの可憐な少女のように見えた。いつも幽々子が見せる表情は笑顔であっても掴み所がなく本心を見せているかどうか分かりにくい物なのだが、そんな雰囲気などない穏やかさを感じるような笑顔だと妖夢は感じていた。
ただそんな穏やかな時間はあっという間に過ぎていき、一週間後には再び白玉楼に同じ面々が集まった。
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「・・・お察しの通りルークは自分の記憶に苛まれていますが、そこに加えて言うなら最後のエルドラントという地に向かった時には、もう自分が消えて死んでいなくなるということを覚悟していたから気を落ち着けていたのは見えました。ですがこうしてこの白玉楼に生者としてなのか死者なのかは分からなくとも、生きているのと遜色ないような暮らしをしていることがこれでいいのか・・・といった葛藤に繋がっているんです。生きているか死んでいるか分からなくとも、他の人達がこういった風に暮らせるようにだとか自分がこうしていていいのかと・・・」
「そんな・・・」
だからさとりに来てもらったと視線を幽々子は向けるのだが、苦々しくも語っていくその話の中身に妖夢は胸が痛むというように手を当て表情を歪める。
「・・・一応、今貴女が何を考えているかは私には分かります。ただそれを踏まえた上でもし彼が生者であり映姫様からここにいることが望ましくないからと引き剥がされることになったなら、私が彼を引き取りましょう」
「えっ・・・地底に連れていくというんですか、人間を・・・!?」
そこでさとりが前置きをした上で出した言葉に、幽々子ではなく妖夢が驚きに目を丸くする・・・さとりの済む地霊殿のある地底は地上にいることが望ましくないからと追いやられた厄介な妖怪達の住みかであり、人間が住むなど言えるような土地ではないどころか数時間もあれば食われてしまうだろう幻想郷屈指の危険地帯であることは知っているために。
「勿論彼の安全に配慮した上で地霊殿で暮らせるようにしますが・・・それだけ私も彼の事を哀れんでです。世界が違うからに技術の違いがあるからとは言え、覚り妖怪としてあのような心を持つ存在になど出会ったことなどありませんから・・・」
「・・・だから、もしもの時はそうするつもりでいると?」
「はい、彼がここにいるべき存在ではないとなったなら私の責任を持ってそうします。彼の事をこれ以上否定されるというのはあまり考えたくはありませんし、私も出来る限りは彼のメンタルのケアに務めたいと思います」
ただそれでもさとりが良心を持ってもしもの場合に行動を起こすつもりだと宣言したことに、妖夢がその言葉を神妙に受け入れる中で幽々子が口を開く。
「そうね。もしもの場合はそうするよう頼むわ。もしもの場合は・・・ね」
「・・・えぇ、そうなった場合はそうさせていただきます」
対して幽々子も言葉だけ聞くならさもそれでいいと言ったように返し、さとりはそっと頭を下げる・・・だが妖夢はその光景に寒さに身を震わせるように体を震わせてしまった。幽々子との付き合いの時間は長いし言葉面だけ見るなら穏やかに理解しているように振る舞っているが、妖夢から見たなら彼女の様子はそんなことになってほしくないししたくない・・・そう無言の圧力が込められているよう、その目に言葉が暗に言っているように感じられたことに・・・
・・・それで翌日になり、さとりは小町の迎えにより白玉楼を後にしていった。その上でルークは一週間という時間を白玉楼でゆっくりと穏やかに過ごしていった。妖夢との剣術稽古以外にも幻想郷の事だったり、様々な事を幽々子から教えてもらったりなどの時間も増やす形でだ。
そしてそんな時間を過ごす中での幽々子の表情は、妖夢から見て裏も何もないただの可憐な少女のように見えた。いつも幽々子が見せる表情は笑顔であっても掴み所がなく本心を見せているかどうか分かりにくい物なのだが、そんな雰囲気などない穏やかさを感じるような笑顔だと妖夢は感じていた。
ただそんな穏やかな時間はあっという間に過ぎていき、一週間後には再び白玉楼に同じ面々が集まった。
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