焔に触れ亡霊の姫は変わりゆく

「・・・さて、もう少しと言った所ですか?」
「えぇ、そうね」
「え・・・一体何の話をしているんですか?」
ただそうしてルークがいなくなって少しした時にさとりが意味深な発言をして幽々子が頷き返した事に、妖夢は一人分からないと首を傾げる。
「幽々子さんは単に私をもてなしたいからとここに留めた訳ではないんです。敢えて私に心を読ませることで私に確かめてもらいたいことについてがあるから、ここに残るようにしてほしいと伝えてきたんですよ」
「え・・・何でそんなことを・・・?」
「・・・もう少ししたらルークの元に行くから、その時に話すわ」
「わ、分かりました・・・」
だがさとりからまさかの事実が出てきた事に妖夢は首を傾げるが、後でと有無を言わさない口調で告げる幽々子に了承を返すしかなかった。主の常にない迫力の込められた言葉に逆らえないというよう。


















・・・そうして少しの間時間を潰し、三人はルークが使っている部屋の方へと向かった。亡霊こそはいるが肉体を持つ存在は白玉楼には幽々子と妖夢の二人の女性しかいないことから、ルークが男である自分は二人の部屋から離れた所を使わせてほしいと言った為、二人が寝る際には近付く事のない部屋にだ。



「・・・少し声を抑えてね、妖夢。ルークに起きられたら元も子もないから」
「は、はい・・・」
それでルークのいる部屋の前に来た幽々子は妖夢に注意の言葉をかけ、頷いたのを確認した後にふすまをそっと音が聞こえない程度に開けていく。



「・・・ごめん、なさい・・・ごめんなさい・・・!」



「・・・えっ・・・!?」
・・・そしてその先にいたのは、布団に寝ながら苦悶の表情で謝罪の声を漏らすルークだった。
たまらず妖夢は声を上げるが咄嗟にそれを押さえるように手を口に当てる中、幽々子はさとりに視線を向ける。
「・・・どうかしら?」
「・・・先程の部屋に戻ってからお話しします。私も覚り妖怪として長い間生きてきましたが、これほど目を背けたくなる心は初めてですし、彼を起こしてしまうのは良くないでしょう・・・」
「分かったわ・・・じゃあ戻りましょう」
ただ幽々子は妖夢には答えずさとりに問い掛けを向けるが、痛々しげに表情を歪めながらの場所変更の願い出に頷き三人はその場をそっと後にしていく。






・・・そうして先程の部屋に戻った所で、さとりが口を開く。
「・・・妖夢さんの為にも説明しますが、私がここに留まるようにと願われたのは幽々子さんが夜になってルークが起きているかと様子を見に行った時・・・あのように苦しんでいる声が聞こえ、静かに様子を見てみたらあのような姿になっていたことから、どういった事なのかを私に調べてほしいということからなんです」
「そ、それは・・・ど、どうして私に何も言ってくれなかったのですか幽々子様・・・?」
「・・・言ってどうなるのかということもそうだけど、ルークがあぁなっている理由は見当はついていたからよ。例え何も知らされず利用されたとは言え、過去に自分が起こしてしまった罪・・・アクゼリュスという街一つを消滅させ、汚泥の中に沈んでいく子どもが自分のせいで死なせてしまった事がルークの心にとても大きく・・・そして消えずに癒えない傷として残っているからこそ、夢の中にまで出てくるほどに苦しんでいるであろう事が」
「っ!!」
そんなさとりから出てきた言葉に妖夢は自身にルークの事を言わなかったのは何故と幽々子に問うが、目を閉じながら口にされていった言葉達にたまらず妖夢は息を詰まらせるしかなかった・・・妖夢は話にしか聞いていないが、ルークが体験してきた物が残酷という言葉ひとつでは生温い物なのかというのは感じていた為に。









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