焔に触れ亡霊の姫は変わりゆく

・・・そうして一同は浄波瑠の鏡に映し出されるルークの記憶についてを鑑賞していくのだが、それらが進んでいく内に場にいる面々は表情を程度の差はあれ変えていった。一番表情を変えていたのは場の面々の中で最も感情が豊かで表情に出やすい小町だが、その表情は分かりやすく・・・痛ましい物を見るような物であった。






「・・・ここで終わり、ですね・・・」
・・・そうしてルークの思い浮かべる肝心な部分だけを見てきた一同だが、被験者の亡骸を抱えながら自分の体が透けていって意識が薄れていって暗闇に包まれ、白玉楼で目覚めた時の映像に差し掛かった所で映姫は浄波瑠の鏡の映像を切った。
「・・・確かにこれを見たならさっきあんたが言ったよう、幻想郷に入れ込むだけの為にこんな記憶を持った奴をわざわざ作り出すなんて有り得ないって言うだろうね。こんな生を送った人間という設定なんて回りくどいにも程があるし、敢えてこんな設定でルークを苦しませる楽しみがあるからそうしたって言うんなら・・・そいつは、とんだ屑だ」
「えぇ、貴女の言うように私も感じましたから私もそう言ったんです」
そうして小町がさとりに気持ちよくないと吐き捨てるように言うように同調をし、だからこそ言ったのだと頷き返す。
「・・・しかしあの体で、まだ七年程度しか生きていないのですか・・・八雲紫、オールドラントではなく外の世界で彼とアッシュの関係のような存在を造り出せるような技術はあるか知っていますか?」
「名前は違いますがクローン技術というものが研究されているとは聞いています。ですが外の世界ではまだ実用的と言えるような段階になってすらいませんし、そもそもクローンという存在を作ることが何の為になるのかといった声が出てくるのは避けられないでしょう・・・それこそ彼の記憶にあったよう本物ではないのに、何故造られた偽物が堂々と存在するのかと言うような声は」
「・・・造られた本人には責任は無いのに、ですか・・・」
「このような時にその対象を攻撃に迫害するのは対象の事をよく知らないからということもそうですが、何らかの不平不満を持つ者がそれを偽物を攻撃する大義名分があるからということでぶつけるからですわ。まぁ他にも理由は細かいものはいくつも出ては来るでしょうが、そういった他と違う異質なものを排除しようとするのは人の性と言えるのは映姫様も御存知の筈ですが」
「・・・えぇ、それはよく承知していますが・・・彼はその攻撃される側にいたというのですか・・・」
映姫はそのやり取りを見て難しい表情を浮かべながら紫に疑問を向けると、平然としたよう返ってきた答えから発展した話にまた一層表情を難しそうに歪める。
「・・・四季様の話は一先ず置いておくけれど、ルークが何で幻想郷に入る前の歩みが浄波瑠の鏡に映らなかったのかに関して紫は分かったのかしら?」
「そうね・・・確かに彼女達の言っているようにあんな記憶をわざわざ植え付ける意味なんて無いと思えたし、そもそも誰かの手で幻想郷に入れられたとしたなら私に藍の目を余程上手く掻い潜ってとなるけれど、そんな事は私も感じなかったし藍からも言われなかったから外部からの手が入った線はまず考えられない・・・というまでしか分からないわ」
「・・・紫でもそこまでしか分からないの?」
「えぇ、現時点ではね」
「現時点では?」
幽々子はそんな映姫に少し触れただけで要点についてを紫に聞くのだが、ハッキリしないというような返しに珍しそうに表情を変える中で現時点という注釈が返ってきたことに首を傾げる。
「・・・一応彼が死者なのか生者なのか分からないことに関しては、こうではないかという仮説はあるわ。けれどそれが間違いないと言えるだけの材料が無いから、少し私はここから離れて確信の為の材料を探してこようと思うわ・・・オールドラントを見つけに行ってね」
「・・・え?」
紫は仮説はあるが確信が無いからと言うのだが、そこで続けた言葉に幽々子を代表に出た声に呼応するよう他の面々もポカンとした表情を浮かべた。いきなりオールドラントという異なる星に向かうと言い出したことに。









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