焔に触れ亡霊の姫は変わりゆく

・・・それで数十分間程ルークの心を読むよう同じく第三の目以外を閉じて集中するさとりの邪魔をすることなく一同は沈黙して待機していた中、そっとさとりが目を開いたのだがこの場に来てからずっと無表情を張り付けたような顔だったのが複雑さを滲ませる物へと変わった。
「・・・終わりましたか、古明地さとり?」
「終わりましたが・・・少し、彼を話の場から外してください・・・彼は自身についてを明かされる事は覚悟しているようですが、正直な所として彼にいてもらうのは私の気持ちとして憚られる物がありますので・・・」
「・・・珍しいですね、貴女が人を見て言葉を選ぶような事を言うとは・・・」
映姫はその表情には触れずにどうかと問い掛けると、さとりがその表情のままにルークを気遣うように席を外すように頼んできたことに意外そうな声を漏らす・・・さとりは覚り妖怪としての性質もあるがその性格の関係上、関係のない他者に対して遠慮せず歯に衣着せぬ発言や態度を取るのが普通なのは知っている為に。
「・・・ルーク、ごめんなさい。少し外に外してもらっていいかしら?妖夢をつけるから、その間は剣術の稽古で時間を使ってちょうだい」
「・・・分かった」
そして幽々子もそんなさとりの事を知っているからこそやんわりとした笑顔でルークに外に妖夢と行くように言い、ルークもまたさとりの事を知らずとも幽々子の様子から何かを察したと素直に頷いた。






・・・そうしてルークと妖夢が外に出た所で、一同は空気を改めてさとりに視線を集中させる。
「・・・さて、古明地さとり。貴女が彼に関してどのような記憶を読み取ったのか、それをこの浄波瑠の鏡で確かめさせていただきます。貴女の口から説明していただくには少し時間がかかりますし、大方八雲紫も分かりやすくそれらを見れるようにする為に貴女を呼んだのでしょうからね」
「そうでしょうね。ですが何らかの防護手段を使っているのか心は読めませんが、どちらにしても言葉で伝えるよりはそうした方が早いと思いますからそうしていただいて構いません・・・ただその前に八雲紫。それだけの為に私を呼んだわけではないのでしょう?」
「そうですわね。と言っても映姫様の持たれる浄波瑠の鏡に彼の幻想郷に来る以前の歩みが見えなかったことから、もしや誰かが何らかの悪意を持って彼を幻想郷に送り込んできた可能性も有り得るのではないかと考えたのですが・・・貴女の様子を見る限りでは、そんな可能性は無いと見ましたわ」
「・・・見透かされているような事を言われるのはあまり気分はよくありませんが、あの記憶を彼をここに入り込ませる為の作り物として植え付けたにしてはあまりにも悪趣味というか、そもそももっと当たり障りのない記憶をつけるのが妥当と思われますからそういった可能性は相当に低いと思いますよ」
その中で映姫が浄波瑠の鏡を手間を省くための使用を口にすると了承しつつさとりは紫に確認を取ると、あっさりと肯定を返しつつその表情の変化を上品に口にしたことに若干不愉快そうにその言葉を肯定する。
「・・・それでは早速お願いしますわ、四季様」
「分かりました。では古明地さとり、私の隣に来てください」
「はい」
そんなやり取りに構わず幽々子は映姫に開始を求め、映姫も了承してさとりに隣に来てもらったことで浄波瑠の鏡を出した。本来とは違う使い方であるが、さとりが見た記憶の中にあるルークの歩みを映し出す為に。









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