焔に触れ亡霊の姫は変わりゆく

「・・・それからのルークの話については長くなるから省くけれど、あの声を聞いて顔を見た私は今までにない気持ちが芽生えたのを実感したの・・・今までこの白玉楼で数多の亡霊に出会ったり、死んだ人の話を聞いたし私も幾つもの死に直面して関わってきた・・・けれどルークの人生についてを聞いて、私やその亡霊達でも知らない死への想いを抱く姿を見て放っておけないと感じたのよ・・・」
「幽々子様・・・」
そうして更に自身の揺れた気持ちを胸に手を置き目を閉じながら話す幽々子に、妖夢もまた胸を打たれたような表情を浮かべた。幽々子の抱いた考えに気持ちが理解出来ない訳ではないのではなく、むしろよく感じ取ってしまったからこそ。
「・・・取り敢えずさっき言ったけれど明日は閻魔様に予定を伺いに行ってちょうだい、妖夢。立場的に忙しい方だというのは知っているから、時間が空くならその時を空けるようにするからこちらに来てほしいと言ってね」
「・・・分かりました」
しかしすぐに目を開いて幽々子が主としての威厳に満ちた命を出したことに、妖夢もまた気を引き締めて頷き返した。この辺りはまだ幽々子としても妖夢としてもルークを放っておきたくない気持ちはあっても、ルークがどんな存在なのかをハッキリさせると共にその処遇を閻魔の来訪で決めることが先だという考えがあったために・・・



















・・・そうして翌日妖夢が出掛けて用事を済ませて帰ってくるのだが、用事が詰まっているので三日後に来るとの事になり二人はその間ルークとの生活をすることになった。閻魔が来るまで時間があるからそれまではここにいていいと。

ただそう言われはしたもののルークもお金も何も払えないのにここにいさせてもらうのは悪いということから何かやれることはないのかと二人に言い、最初は固辞しようとした二人だが思いの外引かないルークにならと幽々子は妖夢の剣術の稽古の相手をするようにと頼んだ。幽々子も妖夢の祖父で前に白玉楼にいた妖忌という人物からの教えで剣は使えるが、妖忌がいなくなってからは剣を取ることもなく妖夢の稽古は一人での自主的な物がほとんどになっているから、この三日の間の妖夢の訓練の相手になってほしいと。

その願い出にルークはそういうことならとすぐに了承し、妖夢は最初こそ大丈夫なのかと疑いつつもルークと純粋に空を飛ぶことなく地に足をつける形で手合わせを始めたのだが・・・手合わせということで相手を傷付けないように配慮こそは互いにするようにはしていたが、それでもルークが妖夢と五分以上に渡り合えるくらいには強かったことに妖夢自身驚かざるを得なかった。自分の剣は妖忌仕込みの剣であり長年の研鑽に自信があったのもあるが、何より特殊な生まれというハンデも加わった人間が半人半霊である自分とそこまで戦えると思っていなかったからだ。

そんな稽古の様子と驚きを浮かべる妖夢の姿を見た幽々子はこう告げた。ルークの剣は殺さなければ殺される戦いを幾多もくぐり抜けてきた実戦の剣であり、命を奪う重さを知っている剣・・・妖夢に剣の素質が無いわけではないけれど、その経験の差に何よりルークを人間だからと侮っていた部分もあったから貴女は押されたのだと。

そういった幽々子の言葉に妖夢は自身の未熟さを理解したと発奮し、三日後が来るまでの空いている時間をルークとの稽古の時間に費やして幽々子がその光景を微笑ましそうに眺めるという時間が続き・・・そして三日が経ち、白玉楼に閻魔様にお供の死神が訪れた。










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