焔に触れ亡霊の姫は変わりゆく

「あら、どうしたのかしら妖夢?」
「・・・いいんですか、幽々子様?言われていた事は分かりますが、命令していただければ人里の空き家を借りれるように交渉して彼を連れていく事くらい私もしましたが・・・」
「あぁ、貴女は白玉楼に生者ではないにしても死者でもない者を置くことを気にしているのね」
「はい、そうです・・・」
そんな妖夢にどうしたのかと問い掛ける幽々子だが、返ってきた返答の中身に苦笑気味に理解する。生真面目であり主の命に従いはするが、主の命だからと怪しいものでも鵜呑みには出来ない彼女らしいというよう。
「・・・気になったのよ、ルークの事が」
「・・・彼の事が?」
「えぇ・・・貴女が帰ってくるまでルークからどういった生を送ってきたのかの大筋は聞いたのだけれど、あの姿で七年程度しか生きていないらしいわ」
「な、七年!?あの姿でなんて嘘でしょうそんなの!?」
それで幽々子も自身の考えを口にするのだが、生きてきた時間についてに妖夢はたまらず声を大きくした・・・ルークの実年齢が見た目相応でないと信じられないということもそうだが、幻想郷では程度の能力を持つ者達は一部の例外を除いてルークより結構小さな姿で何十や何百の年月を生きている者が多いのだが、ルークはその真逆な物だという驚きもあったために。
「いくつか質問をしたけれど、ルークは嘘をつくのはとても下手なのはすぐに分かったわ。だからルークが言ったことは本当にルーク自身の偽らざる体験を話したというのは分かったけれど・・・そのルークが言うには、ルークは人工的に造られた存在らしいのよ。本当の『ルーク』という存在は別にいて、その『ルーク』に秘められた力を求めた者が本当の『ルーク』を拐ったと気付かせない為に・・・本物の『ルーク』の体の一部分を使って作った瓜二つの偽物として、本物の立ち位置に入れる為にと」
「そ、そんなことが本当に有り得るんですか・・・!?」
「その辺りは説明が辿々しかった部分はあったけれど、それでもルークが異なる星から来たというのもあって嘘と言い切れるものではないというように私は感じたわ。そしてその事実を知る少し前、彼はその自身を造った者に操られる形で一つの街とそこに住まう人達・・・正確な数はともかくとしても、一万近くの人々の命を失わせてしまったと言っていたの」
「い、一万!?そんな数をあの人が・・・!?」
だが自分の経験から嘘を言ってはいないと断言する幽々子の話は続いていくが、また出てきた衝撃の言葉に妖夢は更に驚いた・・・妖夢自身は妖怪などの相手をして命を奪った経験は少なからずあるが、一万などという数は人妖を問わず流石に多いと感じざるを得なかった為に。
「話に聞く限りでは本物も持っていた力を使わされたから、そしてルークのいた星では神聖視されていた言葉とその言葉を実行しようと願う人達を騙すためにそうさせられたからとのことらしいけれど・・・その時の彼の表情が忘れられないのよ・・・自分のせいだ、自分がちゃんとしていればと言う自責の念に駆られて心底から悔いている・・・といった表情が・・・」
「っ・・・幽々子様・・・」
その声に幽々子は聞いた話についてを口にして行くのだが、次第に普段ならホワホワした笑顔を浮かべている彼女が複雑さを滲ませた様子を見せたことに、妖夢も話の中身もあって痛ましげな表情を浮かべるしかなかった。想像だけでもルークの様子がどれだけの物であったのか、妖夢も少なからずは感じてしまった為に。









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