焔に触れ亡霊の姫は変わりゆく

「あっ、え、えと・・・す、すいません・・・」
「いいのよ、少し落ち着いて」
そこで初めて男は隣にいた幽々子の存在に気付いて謝罪するが、若干苦笑気味に首を横に振る。
「あ、ありがとうございます・・・あの、こ、ここは何処なんですか?・・・見たところ、俺のいたところにはこんなところは無かったと思うんですけど・・・」
「・・・そうね。じゃあ貴方に落ち着いてもらうためにもここの事について話していくわ」
男は軽く頭を下げた後に場所の説明がほしいと願い、幽々子も一つ頷いた後に話を始める。幻想郷についてに、この白玉楼に冥界という場所の特異性についてを・・・



















「・・・というわけよ」
「幻想郷・・・忘れられし者達の楽園・・・そしてここは白玉楼っていう冥界にある所で、俺は幻想入りという形で幻想郷に入ったって訳ですか・・・」
「そうだと思うわ」
・・・そうして一通り幻想郷関連の事に関して説明が終わり頷き返す幽々子に対し、男はむしろ納得したような表情を浮かばせる。
「・・・ってことは俺、やっぱり死んだんだな・・・そしてここに幻想入りって形で入ってきてしまったと・・・」
「死んだ?・・・珍しいわね。自分が死んだっていう自覚を持っているなんて」
そこで一人言のように呟いた言葉に幽々子は多少珍しそうに声をかける・・・年齢が高い老人なら死んだ時の自覚はあることは珍しくないが、幽々子の前にいる男は老人とはかけ離れた年齢であり健康体に見えるため死とかけ離れているように見えると。
「っ・・・その辺りに関してはちょっと説明すると長くなるんですけど・・・いいですか?」
「構わないわよ~。あぁそれと、私の名前は幽々子、西行寺幽々子よ。今更と思うかもしれないけれど貴方の名前を教えてもらってもいいかしら?」
「はい・・・俺の名前はルークです、よろしくお願いします」
「口調は崩してもらって構わないわ。それで貴方の事について話してもらっていいかしら?」
「え、えっと、分かった・・・」
少し男は躊躇うような空気を滲ませ長くなると前置きをするが幽々子はすぐにいいと返した上で自己紹介をし、男も自分の名前をルークと言った事に固い態度を解くように笑顔で言えば、戸惑いながらも口調を崩して自分の事を話始める。


















・・・そしてルークから話を始めるのだが、その話の中身は幽々子の想像を遥かに超えていた。幽々子は幻想郷を覆う結界の外の事についてはある程度知ってはいるし自分達のいる星が地球という星であることも知っているが、ルークが話したのは・・・オールドラントという異なる星の話だったのだ。

その事についてらしくもなく表情には出さずとも驚いた幽々子だが、ルークもまた驚きを浮かべていた。結界の中の楽園で普通の者達は入れない場所とは聞いていたが、それでもオールドラントの中にある土地だと思っていたという事から異なる星に来たという事実に驚いたのだ。

ただそれでもルークは幽々子の要求もあって話を続けていくのだが、幽々子はその中身に驚いていく他なかった・・・詳しく話をすると長くなるがその生い立ちにルークの正体について、そしてルークを生み出した相手との決着をつけようとする中で自身の体が時折消えていくという現象と向き合い・・・その相手を倒した後、自分の体が完全に消える事を確信して死んでいくんだろうと覚悟していたらここに来たのだということに。






「・・・それで気付いたらここにいて、幽々子からこの場所についての説明を受けたから俺は死んでここに来たって思ったんだ・・・あの時のあの様子から俺が助かったなんて思わなかったし、ここがあの世だって言うんならむしろ納得出来るってな・・・」
「そういうことなのね・・・」
・・・そうして全部話終えたといったルークに、幽々子も納得するしかなかった。見た目に反して亡霊として長い間存在してきた幽々子からしたならルークが嘘を言っていないことは容易に分かるが、だからこそ自分が死んだと考えるのは理解出来るというよう。









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