異なる結末と焔の安寧

「ですが前はともかく、今回はあぁして捕らえるだけに留める事が出来ましたからね。そしてその後のアリエッタを見る限りでは魔物との交流は無くなりはしましたが、それでも色々と知れたことに関しては辛いことはあっても、良かったことの方が多かったと彼女は言ってくれましたよ」
「聞いたのか?その辺りに関してを」
「ディストと顔を合わせることがよくある傍ら、彼女とも話すことは度々ありましてね。それで少し話す時間もありましたので色々と聞いてみたんですが、貴方の記憶にあるような辿々しい口調ではなくスラスラと話しながらそういったように答えてくれたんです・・・謡将達への想いが無くなった訳ではないし、友達と会えなくなった事は寂しいけれど何も知らないままで謡将達の計画を手伝う事は、今となっては考えられないと」
そうしてここでのアリエッタについての話に移したジェイドは、いかな心境や考えの変化があったのかを話していく。
「アリエッタとしては自分が魔物に育てられたことと友達と接していた事を受け入れてくれた被験者のイオン様に、謡将達の事を好きだったことは間違いないとは言ってはいましたが、自分に何も肝心なことを言ってくれなかったことは悲しかったと言いました。特にイオン様に関しては自分が死ぬという事を明かしてくれなかったことは」
「レプリカを内密に造るということを考えればアリエッタからそれがバレるようなことは避けたかったからというのが理由になるが、そうでなければ案外とアリエッタは悲しみはしつつも事実を受け入れてはいただろうと本人は考えた・・・といった所か?その言い方だと」
「えぇ。確かにその場面にいたなら間違いなく悲しんでいただろうとは思ったそうですが、それでも友達との付き合いの上で人も友達も含めて死に関してはよく見ていたから、死ぬ時は人も友達も関係なく死ぬものだとその時から感じてはいたそうです。ただ当時の彼女はそれでもイオン様の死には悲しんだ上で演技は出来なかった事も理解はしていたけど、最期くらいは別れを告げたかったと言いました・・・まぁその後の謡将達は確実にアリエッタに何も言わずに自分の元に引き込んでいただろうとは言わせていただきましたがね」
「厳しいことを言うようだと言いたい所ではあるが、それは間違っていなかっただろうな。導師の事は残念だったろうしもう導師守護役として再起する事は出来ないから、こちらに来いというように計画の事などおくびにも出さず言っていただろうな」
「えぇ、そうなっていたでしょうしそれを見抜けていなかっただろうとは彼女も言っていましたよ。そして今となってはそれに従うことは出来ないとも」
そうしてアリエッタがいかな気持ちや考えを被験者のイオンやヴァン達に抱いたのかに自分がどう言葉を向けたか話すジェイドは、アッシュの納得したような声を受けつつ今のアリエッタは違うと返す。
「謡将達の気持ちは今なら分からない訳ではないと彼女は言いました。自分の記憶にはほとんどないけれど、故郷のフェレス島を失ってママが自分を拾ってくれなかったら自分は死んでいた事を考えて、ホドの消滅関連が預言に詠まれていて預言保守派がそうするために動いていたことを知ったなら・・・自分も預言保守派に対して怒りや憎しみを抱いて、復讐を考えていたかもしれないと。けれどそういった事を何も知らされなくて事実を後で知った今となっては、いくら自分の幼さがあったと言っても何も言わずにただ自分達に付いてくればいいとだけいうような態度を取られていたのは良くない事だと思うと。だからそんな形になるくらいだったらまだいっそ、預言の事だったり全てを自分に話してくれた方が難しいって思いはしただろうけど、何も考えも出来ないから謡将達に付いていけばいいなんて風には考えなかっただろうと言いました」
「確かにな・・・そうして何も知らされずただヴァン達に付いていった結果としてイオンの危機を察してリグレットと敵対する形で行動し、イオンが死んだ後アニスのスパイ行動が原因でアリエッタは決闘だと挑戦をしてきて死ぬことになった・・・今思えばあれはアニスの行動に憤った事もあるが、ヴァン達がアリエッタに真実を教えなかったという責任もあっただろうな・・・」
それで自分がいかに未熟で幼かったにしても教えて欲しかったというようアリエッタの言葉を口にしていくジェイドに、アッシュは前のアリエッタの結末についてを思い出して苦い表情を浮かべた。あれはアリエッタを殺した側であるルーク達というかアニスに大きな問題はあったが、それを踏まえてヴァン達側にも何も言わなかったからこそアリエッタの命令にない暴走に繋がった責任がある・・・そう感じられた為に。









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