異なる結末と焔の安寧

「その辺りの事に関してアニスがまだ甘いと言える部分があったのは、モースがアニスにスパイ以外の役割を求めたなかった事もある上で反抗的な態度を取れなかったというか、取らなかったのがあるからだと思います。もしそんなことをしていたなら言うことを聞かないならと殺されるか、幼い子どもを性欲の対象とする輩にアニスは好き勝手させられるといった可能性は高かったでしょう。それこそ口にするのも憚られるような事をされて、言うことを聞かないというならこれ以上の事になるぞと脅される形でです」
「・・・その可能性についてを聞くだけでも気持ちが良くないのは確かだが、言われてみれば納得出来るな。アニスが金持ちであるとか立場のある者に対して猫なで声を出しての媚を売っていたのは俺の記憶にもあるが、あぁいった態度はむしろそういった経験をしているならまず出来る態度ではなかっただろう。時期的に見ても十を越えた程度の女子が望んでもいない変態との性交を強要されれば、その後男を見るだけでも拒否反応を起こす程のトラウマになりかねんかったのは想像出来るからな」
「えぇ、そういった点ではアニスが素直にスパイを引き受けたのは彼女自身の心身に消えない傷がつかなかったという意味では良かったと思いますが・・・だからこそ性交に限らず言うことを聞かせるためにトラウマを受けるくらいに厳しい事がなかったから、アニスは聡い所にひねくれてませた部分はあったとは言っても詰めまでは甘かったと私は見たんです」
「・・・その辺りの経験があっても不幸だっただろうが、無かったからこそ導師やスパイ関連の事が起きて何とも言えない状態で過ごしてきたということか・・・何と言っていいのか分からなくなるな、そう聞くと・・・」
その上でアニスにとっての不幸中の幸についての話をしていくジェイドに、アッシュは言葉通りに複雑な表情を浮かばせるしかなかった。アニスの人生についてどうなっていた方がいいのか分からないと。






・・・男を経験している上で男を手玉に取れるように動けるというのは、それは酸いも甘いもといったような経験を相当にしている女性だからこその物だ。その点ではアニスの媚売りの態度は男を経験していないからこそ、それもアニス自身感じていたであろう大人の女性とは言えるような物ではない年相応というには少し幼げな見た目もあった。

そんな幼げな見た目のアニスを見て同年代かある程度歳が近いならともかく、大の大人がアニスを性的な興味の対象とするなら変態のそしりを受けるのには十分だったことだろう。現にピオニーもアニスのぶりっこ的な誘惑にはノリはしたが本気になることはないと、時間が経ってからまたと流すだけに留めておいたものだ。

その点で言うとジェイドが言葉にしたようモースの言うことを素直に聞いたからこそそういった変態との望まぬ行為にはならなかったのだが、もしそうなっていたらもそうだがその媚売りに反応した地位のある変態がアニスの身請けをすると言い出したならどうなっていたか・・・ということをアニス自身は自分の幼い容姿を理解しているからこそ考えていない節があった。自分の見た目で興奮する者などいないだろうと、心の何処かで甘く見る形でである。

そういった面でも運が良かったり年相応に甘いといった部分があったアニスであるが、だからこそ様々な事情にがんじがらめにされてしまったということを考えるとアッシュもどう言っていいか分からないという気持ちになったのだ。どうなることが正しいというか、収まりが良くて後味の悪くない結末になったのか分からず・・・









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