異なる結末と焔の安寧

「そこのところに関してはわざわざダアトまで行って調べる気にもなりませんでしたからね。十年前にユリアシティに行ったと先程言いましたが、その時点で私は五十八という年齢で元帥という立場にいましたから自由に動くには様々な制約にきつさがありました。ですからそれからこの十年はもう後に託すためにマルクトでの活動に費やし、両親の事は何もなければいいと思っていましたが・・・もう今となっては生きていてもそうでなくても私にとっては然程興味はありません。亡くなっているなら亡くなっているで年齢的にも珍しい事ではありませんし、生きていても最早借金が出来るほどの元気や余裕などないでしょう。そんな方々の事を気にかけるような気にはもう私はとてもなりません」
「・・・そうだな。もう俺も王としての座を辞したとはいえ、立場もあるが肉体的にそう余裕もない。そんな中でアニスの両親の事を気にする気にはならんし、アニスももう両親の事は生き物としての摂理で死ぬか死んだと思うだろう・・・借金をしなかっただけマシ、自分がそれに巻き込まれなかっただけマシとな」
だがそこでジェイドがもう二人については気にする気にもならないと言うと、アッシュも同意といったように返す・・・アニスに関してはまだ以前の旅もあって付き合いは長かったと言えるが、その両親に関しては顔を合わせて話した時間などほとんどないに等しく、このオールドラントにおいては一度足りとて話したことのない相手の事を親身になって考えられる程、二人は思い入れなどそれこそ厄介な事さえしなければいいと思うくらいしか無かったために。
「・・・まぁアニスについてはこの辺りでとするために最後に質問をするが、アニスは今回結婚はしたのか?十年前なら三十六と言ったくらいの年齢だが・・・」
「いえ、それはしていなかったようです。一応そういったことに関して何故しないのかと聞いてみたのですが、気になる相手がユリアシティにいなかったに現れてもまた船でどこかに行く人だったからと言っていましたが・・・それが方便であることは分かっていました。大方自分がいつかダアトに戻ることも考えていた上で、自分が結婚していいのかと考えた部分からそうしなかったのでしょう・・・罪悪感もありつつも、同時に自分のやったことがバレないかという恐怖心から」
「どちらも無くは無さそうだな。まぁバレないかということに関してはアニス本人は今もバレてはいないとは思っても、ふとした気の緩みから何かを言いかねないことを懸念してなんだろうが・・・そもそもモースがいた大詠師の部屋から証拠が出てくるのではないかとか、俺達や導師達が知っていて隠していると思っていると思うか?」
「いえ、それは無いでしょうね」
それでアニスの両親についてを終わらせ最後にといった話題をアッシュは切り出すが、その話の中身は気付いていたか否かになった所でジェイドは首を横に振る。
「彼女は聡い部分のある人物であり人の後ろ暗い部分もあの頃の歳の割には知っている子どもでしたが、それでもまだ幼いながら程度に知っていたくらいでした。そんな彼女はユリアシティでの暮らしの中で忙しくしつつも借金に追われない生活をしていく内に、モースの事からバレるであるとか既にイオン様達が事実を知っているだとまでは考える程には到ってなかったと思います。もしもう少し歳を取った時でいて経験を積んでいたなら気付いていた可能性はあって、モース関連の証拠を潰しに行っていた可能性はあったとは思いますけれどね」
「・・・まだ幼かった部分があったから、そう考えるきっかけがなかったということか・・・」
そのままジェイドがどうしてなのかと語っていくその中身に、アッシュも納得していった。当時で十三といった年齢であって幼さが滲んでいたアニスでは、それらに気付かなかったのには無理はないのだと。









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