異なる結末と焔の安寧

「理解していただけたことはありがたく思いますが、そこまで言った私はそこで話を終わらせました。理由としては下手に突っつきすぎても良くないというか、もうその時にはアニスも二十歳を越えていましたからどういった選択を選ぶかは本人の自由にさせれば良いかと思った上で、私も頻繁に彼女と会うわけではありませんでしたからね。ですのでユリアシティに行けばアニスに会いはするものの、それ以降はそういった会話をすることは最後に会う時まではありませんでした」
「・・・ということは、アニスは両親に会いに行くだとかダアトに戻るだとかは選ばなかったということか」
「えぇ、最後に会ったのは十年程前ですがもうダアトには帰るつもりはないと言っていました」
それで以降の流れを簡潔に説明していくジェイドにアッシュはその先を察すると、肯定が返ってきた。アニスは少なくとも十年程前まではダアトというか、両親の元に帰ってないのだと。
「まぁいかにアニスが考えたかは私の推測でしかありませんが、やはり私から両親を下手に今の環境から引きずり下ろす事の是非を聞いたことが大きかったのでしょうね。そしてそうして惑う内に彼女は成長していき、両親と顔を合わせない期間も長くなっていってやがて理屈的に考えて帰らない方がいいと思うようになっていった」
「そう思えるようになったのは悪くはないのだろうが、十年前と言ったがそれから今までの間に帰ってない保証はあると思うか?」
「そこまでは私も分かりませんが、もし帰っていたとしたなら両親の葬式といった所くらいだと思いますよ。正確な年齢は聞いていませんが、あの二人は私と同年代か歳上といったくらいのように見えましたからね。前は結構前に無理が祟って亡くなったと聞きましたが、前より健全に暮らせるようになったとしても生きていられるか怪しい頃になっているでしょう」
「確かにそういった年齢に差し掛かっていると考えれば亡くなっていてもおかしくはないか」
その中で話の流れは次第にダアトに帰ってるかどうかから両親が亡くなっているか否かになり、アッシュも両親の現在を知らないなりに死んでいる事は有り得ると漏らす。






・・・この辺りの寿命やらに関しては、周りの環境に文明や医学の発展などがどうあるかに左右される部分が大きくある。劣悪な環境にあれば当然人は早く死にやすく、病気にもなりやすい。だからこそ昔の時代になればなるほどに人々の平均的な寿命という物は短かったものだった。それこそ昔なら今のアッシュの肉体年齢の五十に行けば十分過ぎる程に長生きと見られるくらいにだ。

ただそこに加えて言うなら身分や立場の違いもその中の要素として大きな物であり、顕著な違いを具体的に挙げるならバチカルの上層と下層の生活の質の違いだ・・・アッシュは自身が王になるにあたってこの上層と下層の差を埋めるために以前と今回も含めて行動していき、長い時間をかけてその差を無くしていって下層をスラムと呼べるような場所では無くした。

しかし元の下層の荒れ方を考えれば健康的な暮らしを出来ていた者など皆無と言っても過言ではなかった上で、対する上層に暮らす者達は文字通り上流階級の人間として贅沢もそうだが清潔でいて病気など起きてもすぐに治せるようにといった対処が取られるのが普通であった。

だからこそ王公貴族達と言った国の上層部は流行り病などが蔓延しないなら生き残りやすい傾向が強く、反対に満足な治療も受けられないような下層の人々が死にやすくて荒れた環境になりやすい傾向が強いものだった。ただそれも改善はされていったのだが、それはバチカルの話であって両親に何の関係があるのかと言えば・・・バチカルやキムラスカに限らずオールドラント全体を見ても確かに環境が変わってきたことから人々の寿命こそは伸びてはいるが、それでも七十以上まで生きる事は王公貴族などの立場の者であっても数少ないということだ。









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