異なる結末と焔の安寧

「アニスはローレライ教団の信者としては年若かったことに加え、借金による生活苦から預言に付き従えば大丈夫だなんて風に思えないような敬虔であるとは言えない信者でしたが、それでも両親は借金癖はともかくとしても人の良さや預言にローレライ教団を信じる信者としての顔に関しては好きだったというのはあるでしょう。しかし押し込められた生活の中で預言が詠まれなくなったというのに、不満を持たなかった・・・ユリアシティという環境でそこの住人もしばらくは預言が詠まれない事にやきもきしていた姿を見ていただろうこともあいまり、アニスからしたならどうしてと思ったことでしょう。あの敬虔なローレライ教団の信者の二人がそんなことになるなんてと」
「・・・実際の所についての想像は俺からしたら簡単についたし、お前もこういったように想像しただろう。結局預言を頼りにしていたからこそ何も考えないままに生きていき、何かを深く考える必要がなくて頼るという事がいらない環境にいれるなら別に苦心も何も感じないし考えないだろう・・・と」
「えぇ、貴方の言ったような事を私も感じた上でアニスにもそう話しました」
それでジェイドがアニスと両親に関しての話を続けていく中でアッシュがその先を把握したとばかりの自身の推測を口にすると、小さく頷き肯定を返しながらその旨をアニスに告げたと言葉にする。
「そう聞いたアニスは泣きそうでいて怒っているような、何とも言えない顔を浮かべて何でといった類いの言葉を漏らしていました。彼女からしたなら両親がそんな風に言われる事は嫌だという気持ちと同時に、私の言葉を否定出来ないことも感じていたからだと思います」
「・・・それからアニスはどうなった?」
「そんなアニスに対して私はこう言いました・・・会ったこともない両親に対してのことを私から言われたくないかもしれませんが、今のままにしてやる方が両親からしたなら幸せ・・・いえ、楽なのではないかと」
「楽、か・・・ある意味最もアニスからしたなら聞きたくない言葉だったかもしれんな。自分がこれまでどれだけ二人の為だと稼いで苦労してきたのかという気持ちになるには十分過ぎる言葉だ」
「えぇ、現にアニスはその言葉に激昂しました。一体何を言うのかと・・・ですがそう怒る理由は何なのかと問い掛けると共に、実は今の私の言葉を否定出来ないからこそそう怒ったのではないかと言うと・・・ようやくハッとしたようになりながら慌てて誤魔化すようにしながら猫を被った声で返してきました。まぁそれ以上つつくのも良くないかと思いはしましたが、彼女とはそこまで会う機会もないので私も空々しい演技で一人言を言うようにしながらこういった事を言いました・・・今の預言を詠まなくなったこの環境を不満に思う人は多くいるが、不満ではなく困惑を抱えている人も多くいる。そんな中で敢えて考えることを選ばせ困惑する人を作って何になるのかということもだが、そんな状態に引き込んだ者も困惑であったり苦しまない保証もないと思うのか?・・・というように」
「・・・そう聞いたアニスの反応はどうだった?」
「またハッとしたようになって、動揺を隠せないままに目を泳がせていきました。察するにまた両親に借金をさせてしまうと共に、自分もその煽りを受けることを想像したんでしょうね」
「だろうな。ハッキリとお前がアニスの事を知っていると示唆したわけではないから態度でジェイドはある程度は察したとアニスは思ったんだろうが、だからこそその推測の中身に戦慄したのだろう・・・それこそ下手に自分が何かをしたならジェイドの言うよう三人まとめて不幸になりかねない結末を思ってな」
そして両親についてもそうだが、アニス当人についてもどうなるのか・・・それらを続けて話していくジェイドに、アッシュも納得する。アニスの内心を理解した上でいかにそれを押し止めるような話をしたのかということを。










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