帰るべき場所、一つとなる焔

(・・・ルークがいたなら気にしないでいいというように言っていた事だろう。自分のことなんかというように・・・しかし気付いてしまった以上、その事から更に目を背けるような事は出来なかったし無理矢理に目を背けようとしていたなら、それこそ俺は支離滅裂な気持ちに考えを抱いて苦悩していた事だろうな・・・特にナタリアとの接し方に関しては・・・)
そうして自分がルークに対して抱いた物がいかに影響があったのかと、それを強く感じていた。最も近くにいたナタリアとまともに向き合えてなかっただろうと。
(だが今度はもうナタリアと結ばれるつもりもないし、勝手に転げ落ちていくだろうナタリアを助けるつもりもない・・・そしてガイ達も揃って以前とは違う立場にあり、ティアに至ってはもう死んでいる・・・ルーク自身は辛くも納得はしていたから、例えキムラスカで引き受けることは難しくともマルクトで身柄を引き受けてくれたなら俺も色々とやれたんだが・・・もうルークは幻想郷という場に居場所を作り、明確に帰りたいという意思を見せている・・・それを邪魔するのは良くない上、例え残ってくれたとしてジェイドや俺が動くにしても絶対に何もないままルークが穏やかに過ごせるとも限らん・・・そう考えればこのまま終わった方がいい・・・)
しかし今は違うと思いながらも一抹の不安は決して拭えない上、ルークの意思もあるからこそ幻想郷に戻る方がいいとアッシュは考えていた。例え気持ち的には心残りになろうともと。






・・・以前はアッシュが鍵の捜索もあって頑なにキムラスカに戻ろうとしなかったが、それがルークにとってバチカルのファブレ邸にいることが当然の物だという暗黙の了解を産むことになった。アッシュが戻らないという強い意志を見せている上に剣の腕も六神将の一人と呼ばれるまでになったのだから、迂闊に力ずくで連れ帰ろうとしても返り討ちかもしくは本気での殺しあいになって気付いたらアッシュが還らぬ人となった・・・といった可能性も無いとは言い切れなかった。

そうなる可能性を危惧すればこそ戻ったルークを囲っておいたなら王族の血が絶えないようにすることが出来る上に、最初から『ルーク=フォン=ファブレ』はルークだと素知らぬ顔で誤魔化せば上手くいくんではないかと上層部が見越してルークを何もせずに迎え入れるようにしたのだ。もしアッシュが戻ってくるならその時に考えればいいというよう。

そしてその時のルークはそれまでの旅の緊迫感が無くなったことに加えて、元々『聖なる焔の光』に求められていた事が事なだけに担当しなければならない仕事なども持って無かった為、何もする気の起きなかったルークと下手な事をされて逃げられるようなことをするよりは・・・という上層部の考えの一致から、以前のように屋敷内で何もせずとも一ヶ月と言った時間をゆったり暮らすということになったのである。

しかしそこでアッシュが戻ってきていたなら話は別だったろうと、アッシュ自身も考えている。それこそレプリカなのだからと代替え品として何かある時までは幽閉なり僻地へ飛ばすなりされるか、最悪その時のアッシュはルークへの敵対心があまりにも強かったことから・・・溜飲を下げさせるためにも死んでくれと、インゴベルトや公爵も苦渋の決断として上層部がルークに命じた可能性は大いに有り得たことだろう。

勿論今となってはアッシュもそんなことになどはしたくもないしさせるつもりもないが、どうしてもルークに関しては不穏な雰囲気が漂うことは避けられなくなるだろうと今までの話もあって十分に理解している・・・だからこそもうルークに関しては理屈で納得済みなのである。ルークが穏やかに暮らすにはもう幻想郷にいることの方が良いのだと。









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