帰るべき場所、一つとなる焔

敵の敵は味方という言葉があるが、それは共通の敵という相手がいるからこそであって敵がいなくなれば絶対に味方となるだとか仲良くなれるといったことになるかと言われれば、そんなことはない。むしろ共通の敵がいなくなればその相手同士が敵になる可能性もあるからである。それは歴史の中でそういった一時的な共通の敵を倒すために協力することはあっても、その敵を倒せばその協力は何だったのかと言わんばかりに殺しあう関係になったなんてことになるのは歴史上で見ても良くあることだからだ。

その点ではルークという自分より重い罪を持つ存在がいるから自身や他の面子の罪やその背景から目を背けていたり、自分は大丈夫だといった考えを持っていた部分があるとジェイドは今なら思えるが、だからこそルークがユリアシティに初めて来た時くらいで早くに死ぬなどしていなくなっていたなら瞬く間に自身らが瓦解していただろうとも見たのだ。それこそルークが追い詰められて逃避の為に言ったよう俺は悪くない、他が悪いと自分を守るための言葉を吐いて周りの面々を攻撃していただろう。

・・・その辺りを考えてみればガイが真っ先に離反していた可能性が高かっただろうとジェイドは見ている。言ってみればユリアシティから外殻大地に戻ってきた際、ワイヨン鏡窟から一行から離れると言い出しルークの元に行くと言い出したあの行動は、一見するならルークが心配だという気持ちからの物ではあったが・・・裏を返すならアッシュやジェイド達と行動して戦争やヴァン達をどうにか止めたいだとか、その真意を探るといった事を優先しなかった。この後のオールドラントに大きな影響を及ぼすのがルークかアッシュか、どちらだったのかはその時点ではアッシュの方についていくのが確かだった筈なのにだ。

この事はアッシュという本当の『ルーク』と共にいたことからそれを避けたいという気持ちが大いにあったからだが、だからこそルークが死んでもう存在していなかったとしてガイがジェイド達と共に行動していたかと仮定してみたとしたなら・・・ルークがいないならと諦めて共に行動していた可能性もあっただろうが、それこそルークがいないからとどこかに姿を消していた可能性もまた否定は出来なかったどころか、そちらの可能性が高かったと今ならジェイドは感じていた。

なら何故とそんなことになるのかと今となって事実を知ったからこそ言える形になるが、ガイからしたならジェイド達に付いていかなければならない明確な理由など実際の所は無かったのだ。ただその辺りに関して言うならマルクトの軍に属するジェイドとしてはヴァン達の目的や以降のキムラスカやモース達の情報をかき集め、マルクトの為にそれらを伝えるという利があると考えられたが・・・他の面々にはその時アッシュが取り敢えずこう行動するからと指標を示したからその話の雰囲気に釣られた部分もあり、言ってしまえば是が非でもアッシュに付いていかねばならない理由は実際の所はなかったのだ。

タルタロスを動かす為に人員が必要な部分があったのは確かではあったし、場の空気として余程でなければ離れる方がおかしいといった雰囲気があったからそう言い出しにくかった部分は否定は出来ない・・・だがそれでもキムラスカやモースに見捨てられた事を考え、そして是が非でも行動を共にしなければならない理由はなかったとジェイドからしたら言える。ナタリアにイオンに関しては正義感や放っておけないといった気持ちがあって義務といった考えがあっただろうが、それでも誰かに乞われてであったり願われたといった事から行動していた訳ではない。

繰り返すようだが離れる方がどうかという空気があったから、離れるといった行動が一同が考えられなかった部分が大きかったとジェイドは見ている上で・・・アッシュといることが苦になったから、そして是が非でも共に行動しなければならない理由付けが無かったからガイは離れることにしたのだと考えたのだと見た。









.
7/19ページ
スキ