帰るべき場所、一つとなる焔

「・・・ですからこそ私は勿論ですし、アッシュもその事については了承しています。その為、陛下はその事を気にしないでください」
「・・・そこは分かったが、本当に変わったものだなジェイド・・・以前のお前とは全くの別人のように感じるな」
「全くの別人ですか・・・正確に言うなら彼に色々と教えられたからですよ。それに過去と向き合うきっかけをくれましたからね・・・レプリカと知った時は複雑であり目を向けたくないという気持ちはありましたが、それでも彼のおかげでそう出来ました・・・彼がいなければ今の私はここにはいません」
「・・・それだけお前に影響を与えたのか・・・本当に惜しいな。大爆発の事がなければ是非ともマルクトに来てもらいたかったと尚更に思える」
だから気にしなくていいと平然と告げるジェイドを本当に別人のように変わったとピオニーはしみじみと漏らし、ルークのおかげだと返すとまたしみじみとその存在についてを惜しいと漏らす。
(そう、私は変われた・・・ルークのおかげで。しかし今となって考えてみればルークを関しての様々な事を自覚出来たかどうかで、私にアッシュとティア達の差が出来たとしか思えない・・・一つ間違えれば今の自分がいなかったと考えると、本当に恐ろしいと思えてしまうな・・・)
そんな中で心中にてジェイドは漏らしていく。自身の事とティア達の差について、今の自分があるということへの感謝の念を・・・






・・・ジェイドとアッシュの二人と、ティア達の間で距離が出来た理由はルークに対しての認識に意識の差があったからこそであり、だからこそ紫は二人なら協力者になってくれると見初めて協力するように話をした。だがそもそもを言うならどこでその差が現れたかと言えば、自分がルークのおかげで変われたかどうかを認識しているかどうかにその自覚があるか・・・という点にあるとジェイドは考えた。

今となってはジェイドも感じている・・・アッシュも含めて自分達は決して仲が良かったと言えるような関係ではなく、むしろきっかけ一つでいつでもパーティーが瓦解してもおかしくないと言えるような脆い物だったのだということを。

しかし結果的にそうならないばかりか後の英雄と言ったような称号をもらうくらいにエルドラントまで行って、ヴァン達を倒すということが出来たのは・・・傷の舐めあいに罪の公然の黙認をしあう関係になったこと及び、ルークの方が罪が重いというルーク以外の面々の自分と比較しての共通認識があったからだと今なら言えるとジェイドは考えていた。

・・・自分も含めたルークを除くパーティーの面々は、偽物として王女に就かされたと知らされる前のナタリアを除いて隠し事及び人に見せられない傷を隠すようなメンバーばかりが揃っていたと、今ならジェイドは思える。そしてそのナタリアもそうだと知らされた瞬間、今までの自分は清廉潔白であり自信満々だといったような態度はどこへやらといったような弱った態度へと変わってしまい・・・全員がおおっぴらに出来ない傷や秘密を抱える身となった。

そんな一行だったからこそ、相手を罵ればそれはお前も人の事を言えないだろうといったように自分の傷を突かれる形のブーメランが返ってくるのは明白であったが為に、誰もがその傷をお互いに突かないように・・・突かせないようにする上で、半ば暗黙の了解のような形で何かあったら慰めあって励まし合うような傷の舐めあいの関係で自分達は続けてこられたのだとジェイドは思っている・・・そしてルークが一番抱えた罪が重く、愚かだったと自身を含めた他の面子も考えて逃げていたからだと。









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