帰るべき場所、一つとなる焔

・・・ここで時間と場面は移り、マルクトのグランコクマに変わる。






「・・・ジェイド、良かったのか?」
「何がでしょうか、陛下?というより主語をつけて話をしてください」
・・・グランコクマにて、ピオニーの私室に呼ばれたジェイド。
そこで入室してすぐにピオニーから真剣な問い掛けを向けられるのだが、ジェイドは怪訝そうな表情を浮かべる。
「ルークの事だ・・・話を聞けばもうどうしようもないというのは仕方無かったというのは承知しているし、ルークも覚悟済みだったのは確認はした。しかし和平の使者としてお前をキムラスカに送った時と、それでここに戻ってからのお前を比べてみれば明らかにお前が変わったと俺は見た・・・そしてその原因が誰かと言えばアッシュもその理由に無かった訳ではないだろうが、ルークの方がお前を変えたんじゃないかと見たんだ」
「私が変わった、ですか・・・そこに関しては認めますよ。ですが良かったのかと言うのはもしや、ルークがただ消えてしまうのを良しとするのかと私に問い掛けていたんですか?彼の為に足掻くつもりはないのかと」
「あぁ、そういうことだしお前がそういったことを言うこと自体が変わったと思うところだがな」
ピオニーがそこでお前が変わったと見た原因はルークにあるのではと言ったことに、ジェイドが言いたいことを察したように口にすると肯定だと頷き返す。
「・・・確かに気持ちとして言うなら私がどうにか出来ることなら、どうにかしたいとは思いはしました。ですが大爆発に関しては私がフォミクリー技術の研究を放棄したのもありますし、例えディストに減刑を餌に協力を要求したとしても確実に大爆発を止められる保証など無かったでしょう。それにプラネットストームを止めねばならない以上、音素を用いてどうにかといった対策も出来ません・・・仮にどうにかするための研究がうまくいったとしても、形に出来ても数年単位は確実に使わねばならなかったでしょう」
「数年単位、か・・・現状を考えればとても望ましい数字ではないな・・・」
「そうなりますが、それもあくまでも希望的な観測によるもので絶対にうまくいくとの保証もありません。下手をすればその研究の為にタルタロスが限界を迎えかねないタイムリミットが訪れる可能性は十分に有り得ますし、きっかけ次第ではいつ大爆発が起きるか分かりません・・・言ってはなんですが希望的観測を持たせるだけ持たせてあっさり失敗しました、なんていうような事になる可能性もあるのにそれで時間を割くのは望まれない上に、本人にも一応はそういった事になる可能性を含めて研究は出来ると言ってはみましたが、それならそうしなくてもいいという言葉もいただいています」
「・・・本人にもそう言った上で大丈夫だと断られたというのか・・・」
ジェイドはその答えとして大爆発に対して研究の結果が出るとは限らない上、ルークにも既に確認は取ってあると告げるとピオニーは複雑そうな表情を浮かべた。それらを言わずに済ませていたのかと思いきや、言った上でルークが覚悟を決めていたということに。



(陛下には申し訳ありませんが、真っ赤な嘘です。何分幻想郷や紫関連の事など言えるはずもありませんからね)
しかしそんなピオニーの姿を見ながらジェイドは内心で嘘だと漏らす。本当の事など言えるはずがないからと、様々に誤魔化すための言葉をもっともらしく・・・それでいて大爆発の研究が成功するかの事は嘘ではなく吐いていった事を。









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